研究課題
基盤研究(B)
アレルギー性気管支真菌症を引き起こすスエヒロタケが産生するシゾコムニンの合成研究を行い、提唱構造が誤りであった事を見出し、天然物の真の構造の解明及び全合成を達成した。合成された天然物の細胞毒性を明らかにし、更にアレルギー性気管支真菌症の原因物質であるかの検証を共同研究にて開始した。コプシアアルカロイド、ランドリン類の全合成を2種の合成ルートにて達成した。ランドリン類はシクロプロパン融合型インドリン骨格を有する唯一の天然物群であり選択的な抗悪性黒色腫作用が報告されており、新たな抗がん剤のシード分子として注目されている。しかしシクロプロパン融合型インドリン骨格はその高いひずみにより環拡大が進行しキノリン誘導体に変換されることが知られており、天然物の安定性が合成計画を立てる上で問題となった。第一世代合成法では5置換シクロプロパンの選択的な合成法の確立、シクロプロパン融合型インドリン骨格への変換、更にシクロヘキサン環、アザシクロヘプタン環を融合し、閉環メタセシスにてデヒドロピロリジン環を形成し、N-Boc保護ランドリンBに導いた。N-Boc保護基の除去は選択的なシクロプロバン環拡大反応を引き起こしたため、シリルカルバメートを経由するトランスカルバメーション反応を用いてメチルカルバメートとしてラセミ体ランドリンBの全合成を達成した。第二世代合成法では骨格合成の効率上昇を目的としスピロインドリン骨格に対し、分子内還元的ラジカルカップリング反応によりシクロプロパン融合型インドリン骨格を合成した。その後、Pd触媒を用いるアリル位アミノ化反応及び閉環メタセシスをへてラセミ体、ランドリンA及びBの全合成に成功した。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度の研究計画に掲げたマンザミンアルカロイド、ランドリン、シゾコムニンのうち、ランドリン及びシゾコムニンの全合成を達成した。ランドリン合成は現在不斉合成研究を開始しており、これまで解明されていなかったコプシア族アルカロイドの絶対配置の解明に大きく寄与すると期待される。すでにモデル実験では不斉合成の目処をつけることができている。シゾコムニンは未解明の構造を新たに提唱し、全合成により照明することができた。種々の細胞に対する細胞毒性調査を開始しており、アレルギー性気管支真菌症の原因物質であるか、調査中である。ヒドロカルバゾール類の触媒的不斉合成法を確立した。本反応において独自に開発したキラルビナフチルジアミンを母核とするチオウレアリガンドと希土類金属、特にYb, Tm, Ho錯体を用いることにより、Diels-Alder反応が高収率、講選択的に進行することを見出した。更に本反応はexo選択的に進行した。また環化付加体は新たに生成した6員環状にシリルエノールエーテル構造を有するため、フッ素アニオンによる活性化と活性なアルキル化剤との組み合わせにより、講選択的に4級炭素を構築することが可能となった。本DIels-Alder反応、アルキル化プロセスはワンポット反応としても進行し、4連則不斉中心を含む光学活性ヒドロカルバゾールを効率よく合成することが可能となった。本触媒系は不斉中心を有するジエノフィルに対しても触媒効果を有し、ストリキニーネの不斉全合成に向けて検討中である。
ランドリンの不斉全合成を達成し、天然物の絶対配置の解明及び、生合成経路の解明に寄与すると共に、生物活性の調査、誘導体合成を進め新たながん治療薬の開発につなげる。特にランドリンの構造活性相関の詳細な検討は本化合物が有する抗癌作用機構の解明につながり、新たな抗がん剤開発の起点となることが期待される。更に、ランドリン合成手法を同様な基本骨格を有するコプシアアルカロイド合成へ応用することを検討する。Danishefskyジエンを用いる不斉Diels-Alder反応の開発を進め、ジエン、ジエノフィルのバリエーションを広げ、多様な光学活性天然物合成へと展開する。特に、これまで用いられたことの無い光学活性Tm, Ho錯体を用いる触媒的不斉反応の開発を強力に推進する。特に錯体構造の解明と不斉発現機構の解明が重要課題となる。ストリキニーネをはじめとするヒドロカルバゾール骨格を有する天然物合成研究を推進する。多官能基を有するジエン及びジエノフィル間の触媒的不斉Diels-Alder反応を検討し、計算化学を駆使する反応機構解明を推進する。分子間反応系に加え、分子内反応基質を設計し、その反応性の違いをあきらかにし天然物合成に応用する。
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