研究課題
本研究課題では、血中や中枢神経系(脳内)でのコレステロール代謝平衡を調節しているヘリックス型アポリポタンパク質であるアポA-IとアポEによるHDL産生・代謝調節機構の物理化学的基盤を解明するとともに、HDL代謝制御システムの破綻によって引き起こされる脂質異常症やアミロイドーシスなどの疾患の新たな予防・治療法開発のための科学的基盤構築を目指した。最終年度である平成28年度は、アポリポタンパク質によるHDL産生やアミロイド線維形成における生理的因子として、細胞表面糖鎖による制御機構の解明を進めた。申請者は既に、細胞表面ヘパラン硫酸の多硫酸化ドメインがアポA-Iアミロイド線維の細胞毒性発現に関与していることを明らかにしているが(JBC 290, 24210, 2015)、実際、硫酸化糖鎖であるヘパリンが、ヒトアミロイドーシス変異の一つであるアポA-I 1-83/W50Rフラグメントのアミロイド線維伸長を著しく促進することを見出した。さらに、アポA-Iフラグメントのヘパリン相互作用部位としてアミロイド線維形成に重要な44-65残基領域であることを同定した(FEBS Lett. 590, 3492, 2016)。一方、HDLの形成・成熟過程でのアポA-I分子のコンフォメーション変化を認識・識別する抗アポA-I抗体の開発では、N末側44-65残基をエピトープとする新規抗体がアポA-IのHDL形成に伴うヘリックス構造転移を検出できることを見出し、HDLコンフォメーション特異的高感度イムノアッセイ系の構築に成功した。今後、HDL亜分画の細胞コレステロール除去活性等の抗動脈硬化作用との相関解析を行うことで、従来のHDLコレステロール量に代わる新たな指標としてのHDL活性の迅速定量化が可能な測定方法として、血漿HDL亜分画測定への適用が期待される。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 1件)
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