研究課題/領域番号 |
25293007
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
濱瀬 健司 九州大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (10284522)
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研究分担者 |
相磯 貞和 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (60138013)
小柳 悟 九州大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (60330932)
植田 正 九州大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90184928)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 分析化学 / メタボロミクス / アミノ酸 / 光学分割 |
研究実績の概要 |
アミノ酸代謝障害を網羅的に診断するため、タンパク質構成アミノ酸20種および代謝マップ上で主要な関連アミノ酸を分析対象に加え、「代謝関連キラルアミノ酸メタボローム一斉分析装置」を開発した。対象疾患としては、「芳香族アミノ酸代謝障害」、「分岐鎖アミノ酸代謝障害」、「含硫アミノ酸代謝障害」、「尿素サイクル障害」、「D-アミノ酸代謝障害」を選択した。
メタボローム一斉分析装置としては、逆相分離と陰イオン交換型光学分割カラムを組み合わせた二次元HPLC分析装置とした。平成25年度に各アミノ酸の一次元目の逆相分離条件、二次元目の光学分割条件を検討した結果を受け、平成26年度には一次元目および二次元目を統合した「二次元HPLC一斉分析装置」を開発した。
分析装置の改良としては、長時間の全自動分析を可能とするため、青色LEDを用いる省エネルギー型LED蛍光検出器の開発検討を行い、検出器の試作を行った。また、各種アミノ酸代謝障害のモデルマウスについて、キラルアミノ酸メタボローム解析を実施した。その結果、芳香族アミノ酸代謝障害の一種であるフェニルケトン尿症モデルマウスでは、血中および尿中でD-およびL-フェニルアラニンの有意な増加を認めた。また分岐鎖アミノ酸代謝障害の一種であるメープルシロップ尿症では、血中のL-バリン、イソロイシン、ロイシンの顕著な増加とと共に、尿中においてD-イソロイシンとL-アロイソロイシンの顕著な増加を認めた。特に尿中キラルアミノ酸はキラルを識別することで初めてバイオマーカーとなりうる指標であり、軽症期での診断も可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度には「キラルアミノ酸メタボローム分析システム」の二次元化・統合を計画しており、計画通り装置開発を達成した。また、実際のアミノ酸代謝障害モデルマウスとして「フェニルケトン尿症モデルマウス」、「メープルシロップ尿症モデルマウス」を用いてキラルアミノ酸メタボローム解析を行い、キラルを識別することで新たなバイオマーカーを発見した。以上から研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、平成26年までに開発した「キラルアミノ酸メタボローム二次元HPLC一斉分析装置」を用い、各種アミノ酸代謝障害モデルマウスにおけるメタボローム解析を実施する。代謝障害としては「フェニルケトン尿症」を引き続き解析すると共に、「ホモシスチン尿症」、「D-アミノ酸代謝障害」などを検討する。併せて、ヒト試料におけるキラルアミノ酸メタボローム解析も実施する。
分析装置の更なる改良としては、夾雑成分との分離を更に進めるため、質量分離を新たな次元として導入を試みる。これにより分析装置は三次元の分離モードを有することになり、多数の代謝関連アミノ酸について、光学異性体を識別した精密解析を可能とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画では二次元HPLC一斉分析装置の長時間安定稼働を実現するため、LED蛍光検出器の導入を予定していた。しかし、平成26年度には高性能なLED検出器の仕様を決定するための装置試作を研究協力者である株式会社資生堂と共に行ったため、高額な機器導入費用が発生しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に試作したLED蛍光検出器は平成27年度にフィールドテスト機を導入する予定であるため、その開発・導入費として使用する。
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