研究課題/領域番号 |
25293009
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
金澤 秀子 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (10240996)
|
研究分担者 |
綾野 絵理 慶應義塾大学, 薬学部, 研究員 (10424102)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | バイオマーカー / 機能性高分子 / RNA / タンパク分離 |
研究実績の概要 |
タンパクの活性を損なわずに分取可能なバイオセパレーションシステムの実現を目的に検討した。本法ではタンパクを溶出させるために従来法で必要であったpHや塩濃度等の過酷な溶媒条件を用いずに,高分子の構造変化により生理活性タンパクを脱着させるため,生理機能を損なわずに分離精製が可能となる。タンパクの不可逆的な会合凝集・変性を防ぎ,回収率を向上させ,溶媒や廃液のコスト削減となる。分離条件の最適化と回収率の向上について検討した。現在,抗体医薬の精製においては,Protein Aを用いたアフィニティークロマトグラフィーが多用されているが,溶出溶媒はpH 4付近で行うため,変性・凝集が起きてしまう可能性がある。本研究では,温度応答性高分子poly(N-isopropylacrylamide) (PNIPAAm)を修飾した充填剤表面の性質を温度により変化させることで溶出制御を行い,水系溶媒を用いた温和な条件での抗体精製について検討した。試料としてImmunoglobulin G(IgG)を用い吸着を増大させるためにPNIPAAmにコモノマーとしてATBS (acrylamido-tertiarybutylsulfonic acid)を用いたポリマー修飾充填剤を作製した。IgGは温度による溶出制御によりpH6のリン酸緩衝液のみの温和な条件で分離することができた。PNIPAAmにacrylic acidを導入したPoly(NIPAAm-co-BMA-co-Acrylic acid)を用いたカラムにより,卵の主タンパクであるovalbuminとlysozymeの分離について検討した。担体表面の電荷を温度により制御することによりlysozymeとovalbuminの分離・精製が可能であった。Micrococcus luteusの溶菌反応により活性測定を行った結果,精製後のlysozyme活性は90 % 以上維持されていた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アフィニティー精製用バイオセパレーション技術の確立について検討した結果,本研究では2種類のタンパクを温度のみによって活性を維持しながら分離・精製することが可能であり,IgGも温和な条件で分離可能であり,本法が抗体の精製に有用であることが示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
・RNAタンパク複合体精製のためのアフィニティークロマトグラフィー技術の確立 RNP精製を可能にする環境応答型アフィニティークロマトグラフィーを確立する。200-300塩基組成の7SKRNA等をモデルRNAとして使用しRNP分離精製について検討する。 ・培養細胞からの疾患マーカー精製法の確立 HeLa細胞の大量培養を行い,得られた細胞抽出液から作成したncRNA結合アフィニティー用精製カラム(ncRNAと機能性高分子を結合させた担体をカラムに充填もしくは固相分散用としたもの)を用いてncRNA結合タンパク質をアフィニティー精製する。数種類の腫瘍細胞等の培養細胞を用いて疾患マーカー候補となるタンパクの分離精製について検討し,その結果を担体設計にフィードバックし,さらに最適化する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究は当初の計画通りほぼ順調に進んでいるが、RNAタンパク複合体精製のためのアフィニティークロマトグラフィーにおいてタンパクの分離には成功したものの、モデルRNAやアプタマーでの検討が進まず、次年度に持ち越すことになった。RNAやアプタマーが高額であるため研究費も次年度に持ち越すことにした。
|
次年度使用額の使用計画 |
RNP精製を可能にする環境応答型アフィニティークロマトグラフィーの検討のため200-300塩基組成の7SKRNA等をモデルRNAとして使用しRNP分離精製について検討する。特異的結合性という特性から,RNAアプタマーを用いる。アプタマーは分子認識素子としての利用が期待されており,PNIPAAm修飾した担体表面にストレプトアビジンを固定化し,ビオチン基を導入したRNA(特異的リガンド)を結合する。
|