研究課題
基盤研究(B)
ヒトがん細胞においてMUC21が糖鎖依存的にアポトーシス耐性を生じさせるか明らかにする。複数のヒト食道がん細胞株、ヒト子宮頸がん細胞株、ヒト腎上皮細胞株を用いMUC21強制発現細胞を作製し、アポトーシス耐性に影響があるかを検討した。これらの細胞を材料に、既に作製したモノクローナル抗体とレクチンとの組み合わせにより、MUC21グリコフォーム(GF)を詳細に記述する方法を検証して上記の細胞に適用し、発現MUC21のGFと細胞のアポトーシス耐性とに関連があるか否かをin vitroで検証した。GFとアポトーシス耐性との関係は細胞種によって異なっていた。乳がん及び甲状腺がんの臨床病理標本を用いて、モノクローナル抗体heM21CとheM21Dを用いて組織学的にMUC21GF発現のプロファイル解析を行った。甲状腺乳頭がん及びその隣接正常甲状腺上皮組織を比較した結果、甲状腺上皮にはグリコフォームにかかわらずMUC21の発現は見られないが、腫瘍組織では強い結合が見られた。また、モノクローナル抗体 heM21Aが腫瘍部位に強く結合した。これらの結果から、甲状腺正常上皮細胞にはMUC21は発現せず、甲状腺乳頭がん細胞には糖鎖が付加し、伸長したMUC21が発現していることが示された。 乳腺上皮及び乳腺がん細胞を比較した結果からも、正常上皮細胞にはMUC21は発現せず、浸潤性乳管がん細胞には糖鎖が付加し、伸長したMUC21が発現していることが示された。 すなわち、甲状腺乳頭がん細胞と浸潤性乳管がん細胞にはT-MUC21またはシアリルT-MUC21が発現し、糖鎖が付加していないMUC21及びTn-MUC21は発現していないことが示された。糖鎖が付加し、伸長したMUC21の発現レベルと、アポトーシスを誘導する抗がん物質に対する抵抗性に相関があるかどうかを今後解明する必要があることが指摘された。
2: おおむね順調に進展している
初年度の研究はおおむね順調に進行しており、成果が得られている。
今後は、細胞株を用いた研究においては、アポトーシス耐性を生ずるメカニズムについてさらに追究する。臨床病理標本を用いる研究においては、対象とするがんの種類や症例数を拡大する。
研究室を東京大学から聖路加国際大学に移転する途上にあり、新研究室で消耗品等を新たに購入する必要があるが、前年度には執行出来なかった。当初に購入を予定していた消耗品等の購入に充てる予定である。
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