研究課題/領域番号 |
25293012
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
梅田 真郷 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10185069)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脂質 / シグナル伝達 / 代謝疾患 / 細胞・組織 / 昆虫 |
研究実績の概要 |
体温は生体の恒常性維持において最も重要な因子の一つであるが、その分子レベルでの調節機構については未だ不明な点が数多く残されている。申請者らは、脂肪酸のΔ9位に二重結合を挿入する脂肪酸不飽和化酵素DESAT1が、個体の脂質代謝ならびに温度選択行動の制御において重要な役割を果たすことを見出した。昨年度までの解析により、組織特異的RNA干渉を用いて様々な組織でのDESAT1の発現を抑制した結果、ショウジョウバエの脂肪組織である脂肪体において発現を抑制した際に最も顕著な温度選択性の変化(高温域を選択する)ことを明らかにした。さらに、DESAT1の発現抑制により脂肪体における貯蔵脂質であるトリアシルグリセロールの顕著な減少が観察され、さらに成体の体重・体長の減少、蛹のサイズの減少、さらに細胞サイズの減少を伴うことを見出した。これらの知見により、DESAT1が脂肪体における脂質・エネルギー代謝の調節を介して体温調節行動を制御していることが明らかとなった。 本年度、DESAT1の発現を制御する分子機構を明らかにすべく研究を進めた。まず、外来性プロモーターによりN末端にFLAGタグを付加したFLAG-DESAT1を強制発現することにより膜中の不飽和脂肪酸の量を増加させると、内因性DESAT1の発現が著しく抑制されることを見出した。一方、脂肪酸不飽和化酵素の阻害剤を添加することにより膜中の不飽和脂肪酸の量を減少させると顕著な発現誘導が認められた。これらの知見は、膜脂質中の細胞膜中の不飽和脂肪酸量あるいは膜脂質流動性の変化を読み取ることによりDESAT1の発現が制御されていることを示唆している。現在、DESAT1の発現を制御する膜センサーの同定を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂肪酸不飽和化酵素DESAT1は環境温の変化(低温環境下)により発現誘導されることが知られているが、その分子機構は未だ明らかではなかった。本年度の研究により、膜脂質の脂肪酸組成の変化あるいは膜流動性の変化が同酵素の誘導に重要な役割を担っていることを明らかにすることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
DESAT1を介する脂質代謝と温度選択行動を連携する分子経路の特定を進めるとともに、細胞が如何に温度環境の変化を感知しDESAT1の発現制御を行っているのか、膜脂質を介する発現制御に着目して研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子改変個体の作製が遅れた為、遺伝子改変ショウジョウバエ個体を用いた一連の研究を次年度に繰り越すこととなった。本年度は、主に培養細胞株を用いたDESAT1発現の制御機構の解析を中心に研究を進めた。
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次年度使用額の使用計画 |
遺伝子改変個体の作製を完了し、DESAT1を介する脂質代謝と温度選択行動を連携する分子経路の特定を進める。
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