研究課題/領域番号 |
25293013
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
伊東 広 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (10183005)
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研究分担者 |
小林 哲夫 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (80433994)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Gタンパク質 / GPCR / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は細胞外シグナルを認識して細胞応答を引き起こす際に重要な働きをしている。本研究では多細胞生物への進化の過程で現れた、Adhesion GPCRとGタンパク質制御因子Ric-8によるシグナル伝達の調節機構に関する研究を行い、以下のような成果を得た。1.私共は先にGPR56に対する機能性モノクローナル抗体をいくつか得ていたが収量が低いため大量調製を目指した。マウス腹水へのハイブリドーマの移植によりmg単位で抗体が得られるものがあることが判明した。得られた抗体を用いてヌードマウス内でのヒトグリオーマ細胞の生着・増殖に対する作用を検討することが可能となった。2.いくつかの機能性抗体を産生するハイブリドーマから抗体の重鎖と軽鎖をコードするcDNAを単離した後、抗体発現プラスミドを構築し、リコンビナント抗体の産生が認められるものがあった。3.機能性抗体のエピトープを調べるため欠失および変異導入受容体を用いて解析し、どちらもアゴニスト様に働く異なる抗体がN末側とC末側の別々の領域を認識して作用を発揮する可能性が得られた。4.Adhesion GPCRの一つであるLatrophilin1の細胞外ドメインが細胞外ドメインを欠いたGPR56の膜貫通ドメインと複合体を形成し、Latrotoxinによるカルシウム応答を引き起こすことが明らかとなった。5.Ric-8Bと相互作用することで自身のユビキチン化が抑制され安定化されるGタンパク質αサブユニットGαsと相互作用するE3リガーゼ、脱ユビキチン化酵素の候補分子をMass解析よりいくつか同定し、Gαsの発現に関与するかどうか過剰発現とノックダウンにより検討した。6.ショウジョウバエのRic-8がGα12/13ホモログであるCtaのパルミトイル化を促進することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GPR56の活性化機構と生体内での機能を調べるためには生体内のリガンドや受容体の活性を変化させる抗体が極めて有用である。機能性抗体は得られる量が少なく、また産生するハイブリドーマが不安定である場合が多い。これらの問題を解決するためにマウス腹水での産生、およびリコンビナント抗体の作成を試み、有用性を示唆する結果が得られている。Ric-8に関して、Gタンパク質のパルミトイル化を検出する系の立ち上げに成功し、実際、Ric-8がパルミトイル化を細胞内で促進することが判明した。また、Gαsのユビキチン化修飾に関与するE3リガーゼ、脱ユビキチン化酵素の候補分子の同定に成功し、それぞれの遺伝子の単離とノックダウンのためのsiRNAの入手も済んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
急性骨髄性白血病由来細胞AML1のGPR56をノックダウンすると細胞の増殖が阻害されることが判っている。そこで、AML1細胞の増殖を阻害する抗ヒトGPR56抗体の作成を行っており、これまでに得られている抗体と比較しながら、そのシグナル伝達系に与える影響を検討していく予定である。GPR56の膜貫通ドメインとLatrophilin1の細胞外ドメインを発現しているGABA作動性ニューロンをGAD67-GFPノックインマウスよりFACSでソーティングして調製し、その細胞におけるキメラ受容体の存在と機能の実証を目指す。Ric-8のパルミトイル化促進がパルミトイル化酵素の活性促進か、脱パルミトイル化酵素の阻害のどちらであるか、in vitroのパルミトイル化反応系を立ち上げて検証する。Gαsのユビキチン化修飾に関与する酵素を細胞レベルで同定するとともに、in vitroの系においての検証も試みる。
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