Gタンパク質共役受容体(G protein-coupled receptor; GPCR)は神経系、循環器系、内分泌系、生体防御系など様々な生体システムや個体の形成過程で大事な働きをしている。GPCRはおよそ1000種類存在するが、その中でもAdhesion GPCRというヒトにおいて33種類存在する新たなGPCRメンバー、そしてGPCRとは別にGタンパク質を制御する分子に関する研究を進め、以下の研究成果を挙げた。 (1) adhesion GPCRに属するGPR56に対するモノクローナル抗体を調製した。得られた抗体の中からGPR56を介するシグナルを促進あるいは抑制する作用を指標にして、ヒトグリア腫細胞の遊走を阻害する抗体、さらにヒト急性白血病細胞の遊走と増殖を阻害する新たな抗体を得ることが出来た。 (2)マウスの腹部にハイブリドーマを移植し、その後マウスの腹水を採取することで、多くのハイブリドーマから数ミリグラム単位の抗体が得られることが出来た。(3)これら機能性抗体の重鎖と軽鎖の可変領域をコードするcDNAを単離し、発現ベクターに組込み、HEK293細胞へ導入し、組換え抗体が出来るかどうかの確認を行った結果、いくつかの組換え抗体の発現が出来たことから、今後、ハイブリドーマの不安定性などの問題を克服する糸口が得られた。(4)ヒト乳がん細胞の特殊なゲルを用いた3次元培養により浸潤様構造を示す条件を見出し、その浸潤様構造形成に関与すると思われるいくつかのadhesion GPCRをsiRNAの効果から同定した。(4)機能性抗体がこの浸潤様構造の形成に影響を与えることを見出した。(5) Latrophilin1の細胞外ドメインとGPR56の膜貫通ドメインがGABA作動性神経細胞に共発現していることを抗体を用いて確認し、両者からなるキメラ複合体の存在を示唆する結果を得た。 (3)Gタンパク質のユビキチン化やパルミトイル化を制御する分子を同定し、その翻訳後修飾の分子機構の解明に向け大きく前進することが出来た。
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