研究課題
女性ホルモンの一つであるエストロゲンは、破骨細胞分化を抑制し、破骨細胞のアポトーシスを促したりパラトルモンの分泌抑制およびカルシトニンの分泌を促進することで破骨細胞の機能を抑制する。一方、エストロゲンは骨芽細胞分化を亢進させることが知られるが、詳しいメカニズムはよく分かっていない。我々は以前、Eユニットと呼ばれる特定の硫酸化修飾構造をもつコンドロイチン硫酸鎖が、骨芽細胞上に存在する細胞接着分子であるN-cadherinやcadherin-11に結合することにより、ERKやSmadシグナル伝達を調節し、骨芽細胞分化を促進することを報告した。そこで本年度は、コンドロイチン硫酸鎖が加齢とともに減少していくこと、そして血中のエストロゲンも閉経あるいは加齢によって減少していくことから、骨芽細胞におけるコンドロイチン硫酸鎖の生合成にエストロゲンが関与している可能性を想定し研究を行った。まず、エストロゲンによる骨芽細胞分化の亢進に、コンドロイチン硫酸鎖が関与しているかをMC3T3-E1 細胞およびマウスの骨髄間質細胞を用いて調べた結果、エストロゲンによって、コンドロイチン硫酸鎖の総量およびAユニットとEユニットと呼ばれる2糖が増加することが明らかとなった。逆に、骨粗鬆症のモデルとして使われている卵巣摘出マウスから骨髄間質細胞を採取しコンドロイチン硫酸鎖を解析すると、コントロールマウスに比べAユニットとEユニットおよび総量が激減していた。そこで、Eユニットを合成する酵素を欠損するノックアウトマウスの脛骨を解析すると、卵巣摘出マウスと同程度に皮質骨量も海綿骨量も減り、骨芽細胞分化が障害されることにより骨粗鬆症を発症していることが判明した。これらの結果は、Eユニットを含むコンドロイチン硫酸を増加させる方法が、新しいタイプの有望な骨粗鬆症治療薬になりうることを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、エストロゲンがEユニットを含むコンドロイチン硫酸を増加させることにより、骨芽細胞分化を亢進させることを明らかにし、Eユニットを含むコンドロイチン硫酸を増加させる方法が、新しいタイプの有望な骨粗鬆症治療薬になりうることを示せたため。
致死性の骨硬化症を示すRaine syndromeは、特に頭部において骨が過形成となり、額や眼球が突出するといった病態を示す。最近我々は、この病態にコンドロイチン硫酸の構造異常が係る可能性を見出した。また、予備的な研究により、側頭葉てんかんモデルマウスでもコンドロイチン硫酸の構造異常が観察されているので、今後はこれらの疾患におけるコンドロイチン硫酸鎖の硫酸化構造の重要性を明らかにしていきたい。
初年度後半から2年間研究補助員の雇用を計画していたが、その採用が都合により本年度からにずれたため、その費用分が翌年度に繰り越されたためである。
研究補助員の雇用は継続しているので、次年度の使用計画は概ね順調に遂行できるものと考えている。
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