研究課題
正常な成体野生型マウス脳の視覚野では、大部分の抑制性パルブアルブミン陽性神経細胞(PV細胞)は、4-硫酸化コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(4S-CSPG)により形成されるペリニューロナルネット(PNN)で覆われることにより成熟PV細胞になる。一方、コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素(C6ST-1)の過剰発現マウス(C6ST-1 TG マウス)の視覚野では、6S-CSPGによって形成されるPNNが増え、その結果4S-CSPGによって形成されるPNNが減少するためPV細胞が未成熟な状態を維持し続け、臨界期を終了した成体でも可塑性を示すことが我々により明らかにされている。そこで、成体C6ST-1 TGマウス脳の大脳皮質や海馬などでもPV細胞が未成熟な状態を維持し、てんかん発作を起こしやすくなっている可能性を想定した。野生型マウスとC6ST-1 TGマウスに、カイニン酸を腹腔内投与し、側頭葉てんかん発作を誘発させた。CS鎖の二糖組成解析・遺伝子発現解析・免疫組織化学的解析により、カイニン酸投与後の野生型マウスの大脳皮質と海馬で、6硫酸化CSおよび6S/4S比が増大し、PV細胞の周囲のPNNの性質が変化している可能性が示唆された。また、カイニン酸投与後120分間、けいれん発作の比較を行ったところ、C6ST-1 TGマウスは、野生型マウスよりてんかん発作が起きやすく、加えてカイニン酸投与後2時間以内の死亡率が高いことが判明した。以上の結果から、てんかんの発症や、てんかんを繰り返す難治性てんかんの発症過程に、6硫酸化CSが関与している可能性が推察された。
3: やや遅れている
平成27年度は、コンドロイチン硫酸の硫酸化構造がてんかんの発症にかかわる可能性を示す事ができたが、致死性の骨硬化症Raine syndromeの発症機構に関しては、研究代表者の所属する大学の実験動物施設の全面的な改装工事が行われたため、この病態を示すマウスの飼育が十分にできず、研究遂行に支障がでた。
平成28年度は、実験動物施設の改装工事が終了したので、致死性の骨硬化症を示すRaine syndromeの病態にコンドロイチン硫酸の構造異常が係ることを明らかにし、さらに疾患発症におけるコンドロイチン硫酸鎖の硫酸化構造の重要性を明らかにしていきたい。
次年度使用額が生じた理由は、研究代表者の所属する大学の実験動物施設の全面的な改装工事が行われたため、重要な遺伝子組換えマウスの飼育が十分にできず、研究遂行に支障がでたため。
H28年度は改修工事も終了したので、概ね順調に遂行できるものと考えている。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 5件、 招待講演 6件) 図書 (2件) 備考 (1件)
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