研究課題/領域番号 |
25293015
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小林 俊秀 国立研究開発法人理化学研究所, 佐甲細胞情報研究室, 客員主管研究員 (60162004)
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研究分担者 |
村手 源英 国立研究開発法人理化学研究所, 佐甲細胞情報研究室, 研究員 (30311369)
石塚 玲子 国立研究開発法人理化学研究所, 小林脂質生物学研究室, 専任研究員 (60342747) [辞退]
阿部 充宏 国立研究開発法人理化学研究所, 佐甲細胞情報研究室, 専任研究員 (90415068)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | スフィンゴミエリン / ラマン分光 / カベオレ / ホスホリパーゼC / コレステロール / 脂肪滴 / PLIN2 / Rab18 |
研究実績の概要 |
スフィンゴミエリン(SM)のクラスター形成機構: SMはクラスター化することによりSM分子同士の水素結合に起因する特徴的なラマン散乱を示すことを見出した。特徴的なラマンスペクトルを指標に、SMはジオレオイルホスファチジルコリン中ではクラスターを形成し、ジパルミトイルホスファチジルコロイン中では分散して存在すること、またコレステロールはSMと相互作用することでSM間の水素結合を阻害することを見出した。 カベオレの形成機構:膜の形状を変化させるタンパク質のスクリーニングを行った結果、ホスホリパーゼCベータ1(PLCb1)が酵素活性に依存せず、ホスファチジルエタノールアミン依存的に人工膜を管状に変化させることを見出した。細胞内で過剰発現したPLCb1および酵素活性を欠損したPLCb1の変異体はいずれも形質膜を管状に変化させた。またPLCb1を欠損した動物細胞変異株では細胞膜の特徴的な陥入構造であるカベオレが欠損していた。この結果はPLCb1がカベオレ形成に重要な役割を果たしていることを示唆している。 脂肪滴形成におけるコレステロールの役割:遊離コレステロールの蓄積は非アルコール性肝炎において重要な役割を果たしている。本研究ではヒト由来の肝培養細胞を用いてアシルコレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤により遊離コレステロールを蓄積させた際の脂肪滴の動態について解析した。その結果遊離コレステロールの蓄積は脂肪滴の肥大化、脂肪滴の主要タンパク質であるPLIN2の分解、さらに低分子量GTP結合タンパク質Rab18に依存した脂肪滴と小胞体との融合を引き起こすことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では以下の3つの項目について明らかにすることを目的としている: 1.細胞膜中にスフィンゴ脂質とコレステロールの複合体は存在するのか?存在するとしたらその複合体はどのような時間的、空間的分布を示すのか? 2.何が脂質のクラスター化を引き起こすのか? 3.脂質ラフトの裏側はどうなっているのだろうか? 本年度はこのうち2.3.について研究を進めることができた。2.についてはスフィンゴミエリンのクラスターをラマン分光により解析する手段を見出した。また、3については脂質ラフトの一つといわれるカベオレの形成に形質膜裏側のホスファチジルエタノールアミンが重要な役割を果たしていることが示唆された。また、細胞へのコレステロールの影響を調べる過程でコレステロールが脂肪滴の分布、動態に大きく影響することを見出した。1.については新奇プローブの開発、利用について研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
「細胞膜中にスフィンゴ脂質とコレステロールの複合体は存在するのか?存在するとしたらその複合体はどのような時間的、空間的分布を示すのか?」について研究を完成させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年11月、新規脂質プローブの精製が困難なことが明らかになった。その後の検討でこの問題を解決できることが明らかになり、それらを踏まえた新しい条件下でプローブの調製を再度行った上で、応用実験に供することになった。その結果新規プローブの応用実験が平成28年度の遂行予定となった。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費(血清、プラスチック器具等)、人件費(実験補助)、旅費(国際学会での発表)、その他(投稿料等)を計上した。
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