研究課題/領域番号 |
25293019
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
岩田 修永 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (70246213)
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研究分担者 |
浅井 将 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 助教 (90383223)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / アミロイドβペプチド / γ-セクレターゼ / プレセニリン / アミロイド前駆体タンパク質 / 活性調節 |
研究実績の概要 |
研究計画に従って実験を進め、今年度までにγセクレターゼ活性を修飾する候補遺伝子SLC39A3 cDNAとアミロイド前駆体タンパク質(APP)を共発現する安定発現細胞4クローンを樹立した。また、ネガティブコントロール用の遺伝子として、SLC39A1およびSLC30A3の動物細胞発現用プラスミドの作製と遺伝子発現確認を行った。その一方で、SLC39A3の亜鉛トランスポーターとしての機能とAβ42/Aβ40産生比の変化を解析するために、活性部位に人工的変異を導入した不活性型のSCL39A3のコンストラクトを作製し、Aβ42/Aβ40比の変化について解析を進めた。また、研究計画に沿って、SLC39A3のノックダウン条件を検討し、3種のsiRNAで何れも効率よく培養細胞でSLC39A3をノックダウンさせることに成功している。 Aβ産生に関与し、Aβのカルボキシル末端の多様性を生むγセクレターゼにはAPP以外にもNotchを含む数多くの内在性基質が存在するため、直接的な阻害剤は副作用が多く、アルツハイマー病の治療目的に使用できない。そのため、Aβ40産生には影響せずAβ42産生のみを選択的に阻害するようなγ-セクレターゼ調節薬の開発が望ましい。しかし、この特異性を修飾する分子については全くと言って良いほど明らかにされておらず、本研究がさらに進めば、アルツハイマー病の新たな治療標的を見出したことになり、本疾患の創薬研究上大きな意義があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SLC39A3とAPPを安定に共発現する細胞株の樹立、SLC39A3とAPPとの相互作用の確認、SCL39A3不活性型コンストラクトおよびネガティブコントロール用遺伝子SLC39A1(SLC39A3ホモログタンパク質)、SLC30A3 (39A3とは逆に細胞質側から管腔・細胞外側にZnイオンを輸送する)のコンストラクト作製と培養細胞での遺伝子発現確認、不活性型SLC39A3の安定発現細胞の樹立、SLC39A3の細胞内局在性の検討、細胞膜透過性亜鉛蛍光指示薬ZnAF-2 DAを用いた機能変化の解析系の樹立、培養細胞でのSLC39A3ノックダウン条件の確立を行った。また、昨年に引き続きin vivo解析に備えアルツハイマー病モデルマウス(APPトランスジェニックマウス)の繁殖および飼育(加齢動物の作製)を進めた。研究計画に照らし合わせても一義的な目的は達成されていると考えられる。但し、SLC39A3の機能とAβ産生との関連づけについて優先順位を上げたため、SLC39A3部位欠失変異体を用いたγセクレターゼまたはAPP結合部位の決定については、当初の計画より若干遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
上記の研究成果を踏まえ、Aβの最終的な切出しを行う「γセクレターゼ」とAβ42の切り出しを特異的に亢進しAβ40産生量には影響を与えない分子「SLC39A3」にターゲットを置き、その分子機構を明らかにした上で、Aβ42の切り出しを低下させることにより、副作用が少なく安全性が担保される創薬を目指す。これらの基礎研究により創薬開発基盤を固めた上で、最終的にSLC39A3に拮抗する低分子化合物のスクリーニング研究へと発展させていく。次年度以降は、特に、SLC39A3のAβ切出しに対する分子機構において、SLC39A3がγセクレターゼ複合体に直接結合して切断活性を変化させるのか、または亜鉛トランスポーターとしての生理機能を介して間接的にAβ42/Aβ40 比を変化させるのかを明らかにしていく。前者であれば両分子の結合部位を明らかにし、両者の結合を阻害する化合物をスクリーニングすることで創薬研究に展開する。一方、後者であれば亜鉛トランスポーターに作用し、機能に拮抗する化合物のスクリーニングへと展開する。また、SLC39A3がin vivoでAβ産生調節分子として機能するか否かについて、遺伝子改変マウスやウイルスベクターを用いた過剰発現およびノックダウンシステムを用いて解析していく。 また、「本研究が予想通り進まなかった時の対策」にも記載したように、SLC39A3以外の候補遺伝子についても、過剰発現およびノックダウンシステムによってAβ42/Aβ40 比の変化が観察され次第、その分子機構の解明を進めていく予定である。
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