研究課題
基盤研究(B)
筋萎縮性側索硬化症 (Amyotrophic Lateral Sclerosis : ALS) は、上位及び下位運動ニューロンが、選択的かつ系統的に傷害される神経変性疾患である。我々は、変性運動ニューロンの近傍から始まるグリア細胞の活性化を修飾する因子としてオステオポンチン (OPN) に着目している。本年度は、OPN欠損ALSマウスにおける発症遅延の背景を解析することを目的とし、以下の解析を行った。Grip Strengthの変動を遺伝子型ごとに比較したところ、OPNを欠損させたSOD1G93Aマウスでは発症期の前後を中心として筋力低下が遅延する傾向にあった。このような差が見られた発症期 (約100日齢) に採取した腓腹筋切片のヘマトキシリン・エオジン染色では、OPNを欠損しているマウスの方が変性、萎縮した筋肉の割合が少なかった。続いて、発症期 (約100日齢) と疾患初期 (約120日齢) の脊髄切片を用いて免疫組織染色を行なったところ、SOD1G93Aマウスでは100日齢から120日齢にかけてミクログリア、アストロサイト共に著しい増加が観察された。一方、SOD1G93A /OPN (-/-) マウスではそのような増殖が抑制されていた。画像解析による発色強度の比較からも、特に120日齢において顕著な差が確認された。疾患初期から運動ニューロン外で観察されるOPNの粒子状構造物について更に解析を進めたところ、CD45陽性ミクログリア/マクロファージに貪食されている組織像が観察された。ミクログリア/マクロファージには炎症を促進するM1型と炎症を抑制するM2型が存在するが、OPN貪食細胞はCD11c、CD68、CD86、MHC class II陽性かつCD206、iNOS、VEGF陰性という特徴的な表現型を示した。
2: おおむね順調に進展している
当初計画した通り、筋萎縮性側索硬化症におけるオステオポンチンの病態形成への役割について、モデルマウスを用いたインビボでの解析は順調に進行している。一方、その詳細なメカニズムを解析するための細胞モデルを用いたインビトロでの実験では幾つかの克服すべき問題に直面しているが、現在までにそれらの問題を解決できる目処が立っている。
筋萎縮性側索硬化症におけるオステオポンチンの病態形成への役割について解明するために、より詳細なメカニズム解析が可能なインビトロ実験系の樹立に注力する。
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