研究課題
ALS発症期以降に運動ニューロン由来のOPNがグリア細胞に与える影響を明らかにすることを目的に、OPN受容体のひとつであるCD44に着目し、マウス脊髄切片の免疫組織染色や初代培養グリア細胞のOPNに対する応答の解析などを行った。CD44は野生型や発症前のSOD1G93Aマウスでは主として脊髄白質のアストロサイトで発現が認められたが、病態進行に伴い白質だけでなく灰白質にも斑点状の染色像が見られるようになり、疾患終期には白質と灰白質ともにCD44の強い発現が認められた。一方、SOD1G93A/OPN(-/-)マウスではSOD1G93Aの同疾患期と比較して、このような灰白質でのCD44の発現の広がりの時間経過が遅れることが確認された。これらのことより、ALSモデルマウスにおいて運動ニューロンからECMへと放出されたOPNが、脊髄白質のアストロサイトを活性化させ、変性運動ニューロンの近傍 (灰白質) へと浸潤させている可能性があると考えた。そこで、これを検討するためにOPNに対するアストロサイトの運動能 (走触性) を解析した。培養皿基質に固相化したOPNは強力にアストロサイトを誘引したが、この性質はCD44中和抗体にて細胞を前処理することにより抑制された。続いて,細胞の運動能に関する分子としてアクチンに着目して細胞免疫染色を行ったところ、OPN刺激条件下ではアストロサイトの細胞体が肥大化し突起を伸長させた染色像が得られた。また、OPNは, 細胞膜に発現するCD44(OPN受容体)を介し、アクチンを架橋するタンパク質であるERMを活性化させることも見出された。さらに、OPNはアストロサイトの分裂・増殖を促すことがBrdU法により確認された。こうしたことから,OPNはCD44を介してアストロサイトを活性化させる因子として機能することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初計画に従い、筋萎縮性側索硬化症におけるオステオポンチンの役割について、モデルマウスを用いたインビボ研究および培養細胞を用いたインビトロ研究の両面からの解析が順調に進行している。
最近、筋萎縮性側索硬化症の発症におけるマトリクス・メタロプロテアーゼの役割に関する論文が発表された。我々が研究対象としているオステオポンチンは、様々な細胞においてマトリクス・メタロプロテアーゼを活性化する因子として働くことが報告されている。我々のこれまでの研究で明らかとなった筋萎縮性側索硬化症における病態メカニズムが、マトリクス・メタロプロテアーゼの異常制御とどの様に関わるのを明らかとすることで、新たな治療法の開発に繋げたい。
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Mol. Brain
巻: 7 ページ: 62
doi: 10.1186/s13041-014-0062-1