研究課題/領域番号 |
25293022
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大島 吉輝 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00111302)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 天然物 / 糸状菌 / 未利用遺伝子 / エピジェネシス / 化学変換 / ケミカルスペース |
研究実績の概要 |
本研究では、糸状菌の二次代謝物を生合成に関わる休眠遺伝子を発現させ、構造多様性に富む新規天然物を生産させるとともに、それら天然物の周辺化合物群を構築し、創薬シーズとして有用なケミカルスペースの拡充を図った。 我々はこれまで、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を添加してChaetomium属糸状菌を培養することにより、多様な構造をもつケトフェノール類を生産させた。これらケトフェノール類は、共通の芳香族中間体を経由して生合成されるが、この中間体は化学反応性に富む分子である。本研究では、中間体やその類縁体の生合成遺伝子を異種のかびであるAspergillus oryzaeで発現させて新規物質の生産を試みた。その結果、新たな構造をもつ物質の取得に成功した。さらに、中間体の高度な化学反応性を活用した分子変換によって、多様な新規芳香族ポリケタイド化合物を合成した。中間体とインドール類などとの反応で生成する多環式骨格は、ポリケタイド分子の構造上の性質を適切に活用できたと言える。また、これらの反応は、新規ハイブリッド型ポリケタイド化合物ライブラリーの構築に利用できるものと考えられる。このように、生体内で構造多様な化合物へと代謝される鍵中間体は、人為的に多様な化合物へと導くことができるといえ、新しいケミカルスペースの開拓に有用であることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的である“創薬シーズを指向した構造多様性に富む新規天然物を構築”といった観点では、その方法論と具体的な化合物の両面できわめて大きな成果を出した。現在、研究成果を論文にとりまとめて、国際誌に投稿している。
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今後の研究の推進方策 |
期待以上の成果がでている、エピジェネティックな方法論を用いる新規二次代謝物の生産とその展開を強力に進める。 平成26年度までは予備実験の域をでていない、分子生物学手法による二次代謝物の生合成遺伝子の発現に関する研究は、上記の研究との関連を十分に考慮しながら進める。すなわち、本研究の目的を達成して、創薬に貢献できるように、できるだけ効率的な研究内容としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、化学的手法と分子生物学的手法の2種の方法により、糸状菌の未利用遺伝子を覚醒させ、そこから新規な二次代謝物を探索する戦略である。ただ、あまりにも前者の方法論による研究が進展したことで、より経費を必要とする後者の研究を実施するだけの時間的余裕がなかった。すなわち、きわめてポジティブな理由に依るものである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度も、前者の方法論をさらに伸ばす試みをしたい。そのためには、研究室のより多くの人員を割く予定にしている。加えて、後者の研究もトライする。そのためにはより経費がかかる。未使用額はそのために充てたい。
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