研究課題/領域番号 |
25293023
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
高山 廣光 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90171561)
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研究分担者 |
北島 満里子 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (60195261)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 天然活性物質 / 天然物化学 / 生物活性物質の探索 / 生物活性物質の合成 / アルカロイド |
研究概要 |
薬用資源植物の成分探索により、脳機能、特に「痛み」と「記憶」の制御に関与する天然リガンドを見いだし、これらシード分子の化学合成および医薬化学研究を実施することで、新規な「鎮痛剤」および「認知症改善薬」開発のための先導化合物の創出を目的に研究を行った。以下が実績である。 鎮痛性アルカロイドMGM-9の代謝安定性の改善を目的として、2位が炭素-炭素結合、7位が炭素-酸素結合で架橋した2位、7位sp3炭素の誘導体MGM-29、MGM-30を合成した。その安定性はMGM-9と比較して著しく高く、MGM-9のヘミアミナール構造の2位架橋部位を炭素原子に置き換えることで代謝安定性が向上したことが明らかとなった。7-Hydroxymitragynineをシード分子とした構造活性相関研究により新規鎮痛性アルカロイドMGM-15、MGM-16を創製した。これら化合物のin vivoマウスにおける抗侵害作用は、morphineと比べ、皮下投与ではMGM-15は15倍、MGM-16は71倍、また、経口投与では、MGM-15は50倍、MGM-16は240倍の強力な抗侵害作用を示した。さらに神経障害性疼痛下でのMGM-16の作用は、μ、δ受容体を同程度介したものであることが明らかとなった。 カンナビノイド受容体アンタゴニスト活性を有するイボガ型アルカロイド類の全合成研究を行い、新規イボガ型アルカロイドの合成を達成した。 VoacangineのTRP受容体に対する活性評価を行い、本化合物がTRPV1並びにTRPM8アンタゴニストであり、さらにTRPM8受容体に対しては化学アゴニスト選択的阻害作用を示すことが明らかとなった。 アセチルコリンエステラーゼ阻害剤探索のため、タイ産Lycopodium nummularifoliumの成分探索を行い、新規アルカロイド7種を含む計15種のアルカロイドを単離した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MGM-9を基に分子設計と分子修飾を繰り返し、この点を克服した創薬開発候補化合物を創出することができた。この成果を特許申請するとともに、論文として公表できた。経口投与でモルヒネの240倍の強力な抗侵害作用を持つ新たな鎮痛性アルカロイドMGM-16を創製し、論文として公表できた。 VoacangineのTRPV1アンタゴニスト作用並びにTRPM8受容体に対する特異な化学アゴニスト選択的阻害作用を見いだし、論文として公表できた。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 平成25年度に得られた結果を基にして、オビオイド受容体アゴニスト(7-Hydroxymitragynine)に関して引き続き機能評価と構造最適化を繰り返し創薬開発候補化合物の取得を目指す。 (2) カンナビノイド受容体リガンドに関する研究では、引き続き、イボガ型インドールアルカロイドである 3,6-Oxidovoacangineの不斉全合成によるサンブル供給を目指す。 (3) TRPリガンドに関してもボアカンジン類の不斉全合成による評価用サンプル合成、ボアカンジンの化学修飾による誘導体合成を行い、構造活性相関研究を深める。特に、インドール環やイソキヌクリジン環が必須要素(ファーマコフォアー)であるかを解明する。 (4) アセチルコリンエステラーゼ阻害剤に関する研究では、前年度に引き続き、リコポジウムアルカロイド (タイ産Lycopodium属植物のL. carinata)の成分探索とLycodine, Huperzines, Lycopoclavamine-A, Lycoposerramine-Rなどのアルカロイド類の不斉合成研究を行う。 (5) コプシアアルカロイド類、シニクイチアルカロイド類、ストリクタミン類、サルパギン型アルカロイド類の全合成研究も実施し、これら化合物とその合成中間体の活性 (上記1から4)を評価することで、あらたなシード分子の発見に繋げる。
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次年度の研究費の使用計画 |
更新を予定していた機器類が修理により使用できるようになったため、購入を次年度に変更した。 機器類の更新を行う予定である。
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