C5-nor stemmadenine型インドールアルカロイドであるConolidineの全合成研究を行った。Conolidineは非オピオイド性新規鎮痛薬のシード化合物と報告されているが、その詳細な作用機序は解明されていなかった。そこで、作用機序解明の為の分子プローブ合成を指向し、Conolidine及びその類縁体2種の合成を行った。鍵反応であるシリルエノールエーテルを用いた金触媒環化反応の詳細な検討を行う事で、副生成物の構造並びに幾何異性体の特異な反応性を見出し、目的化合物の収率を92%まで改善した。同化合物を用いて、Conolidineを含む3つの天然物の全合成を達成し、論文として発表した。 カンナビノイド受容体、あるいはTRPチャネルに対するアンタゴニスト活性を有するイボガ型アルカロイド類(voacangineなど)の不斉全合成を検討した。現在までに、本アルカロイドの中心骨格であるイソキヌクリジン環の構築に成功した。 アセチルコリンエステラーゼ阻害剤探索のため、タイ産Lycopodium carinatumの成分探索を行い、新規5種を含む26種のアルカロイドを単離した。既知アルカロイドの内、Lycocarinatine Aとして報告された化合物の化学構造を訂正するに至った。これらの成果を論文として纏め投稿、受理された(日本薬学会誌)。また、大量供給法の確立を目指してリコポジウムアルカロイド類(Lycopoclavamine A)の不斉全合成を検討した。Lycoposerramine-Rの不斉全合成を達成し論文として発表した。 コプシアアルカロイド類、シニクイチアルカロイド類、ストリクタミン類、サルパギン型アルカロイド類、ヒガンバナ科アルカロイドの全合成研究を実施し、新規コプシアアルカロイド Kopsiyunnanine K、かご型構造を有するサルパギン型アルカロイドKoumineの不斉全合成を達成した。後者の結果は論文として投稿し受理された(アメリカ化学会誌)。
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