研究課題/領域番号 |
25293028
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
中川 秀彦 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (80281674)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ケミカルバイオロジー / ケージド化合物 / 薬学 / 有機化学 / 光スイッチ |
研究概要 |
既に開発したケージドNO(光制御型NOドナー)を基に、可視光で制御可能なNOドナーの開発を行った。化合物の分子設計を、NO放出部位と、光吸収部位に分割し、光吸収部位で吸収した光エネルギーを電子移動反応のエネルギーとしてNO放出部位に伝達し、NO放出を促進させる設計とした。分子設計に基づいて化合物を化学合成することに成功し、光照射時の性能を検証した。その結果、従来の紫外線照射時のNO放出に加え、青色光照射時にもNOの放出が観察された。光吸収からNO放出までの総合的な効率(吸光係数と量子収率の積)は、約47と従来から知られるケージド化合物の効率と同程度の実用的な効率を示した 既に開発したケージドH2S(光制御型H2Sドナー)を基に、より長波長の光で制御可能な化合物を目指して、まず比較的波長の長い紫外線(UVA)で制御できる化合物の開発を目指した。UVA光は短時間低強度であれば、培養細胞にも適用可能であるので、ケージドH2S化合物の細胞応用に有用である。開発済みのケージドH2Sの光解除性保護基を、同じ反応機構を有すると考えられているUVA吸収型の保護基へと改良し、化学合成した後、性能を検証した。新たに合成したケージドH2S化合物は、UVA光領域である330-380nmの光照射によって、H2Sを放出することが確認された。また、今回開発したケージドH2S化合物の2つのカルボキシル基をアセトキシメチルエステルで保護してプロドラッグ化したのち培養細胞に投与すると、培養細胞内でケージドH2S化合物へと代謝され、光照射(UVA)に応じて、細胞内でH2Sを放出することが確認された。この化合物は光照射しないときには細胞内でもH2Sを放出することなく安定に存在し、培養細胞に適用可能なケージドH2Sであることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、ケージドNOについては、可視光で制御可能な化合物の創出に成功し、その光照射に対する性能を定量的に検証することができたから。 また、ケージドH2Sについても、従来より長波長化することに成功し、培養細胞系で利用可能な化合物の創出に成功したから。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、計画に沿って、ケージドNOについては可視光制御可能な化合物を用いた培養細胞系および動物組織を用いた検討を進め、動物実験に応用可能なケージドNO化合物の創出を目指す。これにより、NOの動物体内での挙動や作用を解析する実験に資することができ、またNOを用いた治療研究に応用できる。 けーじどH2Sについては、まず可視光で制御可能な化合物の創出を目指し、光解除性保護基の改良を行い、また平行して本研究の目的にあった新たな光解除性保護基の開発を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
ケージドH2S化合物の改良において、当初想定していたよりも合成反応が困難であることが判明し、当初計画していた種類の化合物をすべて合成することができなかったため、使用する試薬類が予定より減少したから。 困難であった合成については、達成することができたため、次年度に当初計画していた改良型化合物の候補の残りを合成する。このために次年度使用額の予算を使用する。
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