研究課題/領域番号 |
25293030
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
小松 康雄 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究グループ長 (30271670)
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研究分担者 |
南川 典昭 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (40209820)
平野 悠 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 主任研究員 (70415735)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | オリゴヌクレオチド / アンチセンス / miRNA / siRNA |
研究実績の概要 |
1)2本鎖RNAの架橋化反応 2本鎖DNAの相補的な部位に脱塩基部位を生成させ、それらを2価の架橋化試薬によって連結する反応を以前に開発していた。同架橋化反応が、2本鎖RNAに対しても有効かどうかを調べた結果、RNA鎖中にも脱塩基部位を形成させ、架橋化も可能であることを明らかにした。しかしながら、架橋されたRNAは保存期間中にわずかに分解が見られ、架橋化DNAよりもやや不安定である可能性が示された。そこで2’-O-methyl RNAの2本鎖に対する架橋化反応を行い、DNA、RNAと同様に脱塩基部位の生成とその架橋化が可能であることを確認した。 2)架橋化2本鎖構造を有するDNAおよび2’-O-methyl RNAの熱力学的安定性の解析 RNAと相補的な配列を有するDNAが、RNAとの結合配列に隣接して架橋化2本鎖構造を有する場合、RNAとの結合がどのような影響を受けるかどうかを調べた。実験の結果、ハイブリ領域に隣接して通常の2本鎖構造を有するDNAは、1本鎖のDNAと同じ融解温度(Tm)を示した。一方で、架橋化2本鎖構造を隣接部に有するDNAは、標的RNAとの結合を高度に安定化することを明らかにした。またこの安定化効果は、2’-O-methyl RNAにおいても同様に保持されることを見出した。 3)架橋化2’-O-methyl RNAを用いた細胞内におけるmicroRNAの抑制活性の評価 がん化した細胞において多く発現していることが知られているmiR21と相補的な配列を有する2’-O-methyl RNAの両末端に、架橋化2'-O-methyl RNAを結合させた核酸を合成し、細胞内におけるmiR21の抑制活性を調べた。実験の結果、架橋化2本鎖構造を有する核酸では、通常の2本鎖構造あるいは1本鎖構造のみの核酸よりも高い抑制活性を有することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
架橋された2本鎖構造による隣接ハイブリの安定化効果は、当初は想定していない予想外の結果であった。そこでこの特異な現象の原因を明らかにする実験を2014年度は中心に進めた。また架橋化核酸を用いてmiRNAに対する阻害効果を、細胞を用いて評価するまでを行い、従来型のアンチmiRNA核酸よりも高い抑制活性を有するこをと確認した。これらの成果より、概ね予定通りに実験は進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
架橋化するリンカーの構造や核酸の鎖長を変えるなどして、隣接部のバイブリをより効果的に安定化する構造を明らかにする。 また、昨年度はmiRNAと結合可能な核酸の両末端に、架橋化2本鎖構造を有する核酸に関し、細胞内におけるmiRNAの活性を抑制する効果を評価した。今後は、5’および3’のいずれか一方にのみ架橋構造を有する場合に関して活性を評価し、アンチmiRNAとしてさらに効果的に作用する構造を見出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2本鎖核酸の架橋化による安定性を調べる過程で、予想外の安定化効果があることを見出した。その安定化効果を詳細に調べる実験を進めたことから、細胞を用いたmiRNA抑制活性の評価実験が年度後半にずれこんだ。この変更に伴って、関連する予算も持ち越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
まず初めに、架橋構造が周辺のハイブリ領域にもたらす安定化効果の本質をさらに詳細に調べる実験を行う。その実験に用いる複数の核酸の合成に必要な試薬類を購入する。また核酸の受託合成も依頼する。また、細胞を用いた評価を行うため、それに関連する試薬類を購入する。特に、実際に合成したアンチmiRNA核酸が、miRNAと細胞内において結合しているかどうかを明らかにするため、分子生物学実験用の試薬類を購入する。
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