研究課題/領域番号 |
25293034
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研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
青木 康展 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 研究センター長 (20159297)
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研究分担者 |
中島 大介 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 主任研究員 (10281411)
松本 理 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 主任研究員 (60132867)
野原 恵子 独立行政法人国立環境研究所, 環境健康研究センター, 室長 (50160271)
増村 健一 国立医薬品食品衛生研究所, 変異遺伝部, 室長 (40291116)
柳澤 利枝 独立行政法人国立環境研究所, 環境健康研究センター, 主任研究員 (70391167)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 環境 / 遺伝子 / 変異原性 / 大気汚染物質 / リスク評価 |
研究実績の概要 |
ベンゾ[a]ピレンをはじめとした多種多様な発がん性をもつ多環芳香族炭化水素(PAH)やその誘導体が都市大気中の浮遊粒子には含まれていることが知られている。現時点における肺がんの発症は、過去数10年にわたる変異原物質曝露の累積効果によるものであり、現在の健康リスクの状況を把握するには、過去の曝露レベル知る必要がある。本研究では、都市大気中の浮遊粒子から被る健康リスクを定量的に評価するために、浮遊粒子の成分が体内で示す変異原性(in vivo mutagenicity)や、そこに含まれる変異原物質の濃度の経年変化を明らかにする。 東京都内の定点で採取した浮遊粒子のうち、昨年度に引き続き1980 年と2010年に採取された粒子の抽出物をgpt deltaマウスに気管内投与し、肺中で誘導された突然変異の解析を進めた。当初は、マウス1匹あたり最高用量1.2 mgの抽出物を投与したが、肺のうっ血など壊死を伴う影響が認められ突然変異の解析を進めることが難しかった。そこで、最高用量を0,6 mgとして投与実験を行った。その結果、2010年の抽出物では、最高用量において酸化ストレスによる突然変異発生の指標であるG>T塩基置換の発生頻度が有意に増加し、総体の突然変異頻度も増加していた。現在1980年の試料についての解析を進めている。また、近年我が国の都市部で採取した試料に含まれる発がん性の高いPAHの濃度を分析したところ、揮発性の高い成分であるcyclopenta[c,d]pyrene [CPcdP]等がPAH総体の発がん性に大きく寄与していると予測された。 さらに、大気中に存在する変異原物質1,2-ナフトキノンが肺中で示す突然変異のスペクトル解析を進めた結果、gpt遺伝子の#406塩基がG>T塩基置換のホットスポットとなっていた。#406は酸化ストレスのホットスポットであり発がんの機構を考察する上で興味ある知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ予定通り。2010年の抽出物についてgpt deltaマウス肺への気管内投与を行い、突然変異の解析を進めることが出来た。予想以上に抽出物の毒性が強く、投与量の設定が難しかったため、予定していた1980年抽出物の変異原性の解析を26年度中に終了することが出来なかった。また、1,2-ナフトキノンによるin vivo mutagenicityのホットスポットを同定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
予定より遅れたが平成27年度中に、1990年と2000年に採取した浮遊粒子抽出物のgpt deltaマウス肺への気管内投与を行い、さらに、1980 年と2010年の試料と合わせてin vivo mutagenicityの経年変化を解析する。これらの情報を基に、都市大気粒子成分総体の発がんリスクを化学物質の複合曝露影響評価の基本的な考え方であるComponent-based approachとWhole mixture approachを活用しつつ、リスクの経年変化の解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定したよりも試薬類の納入価格が低かったため。
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次年度使用額の使用計画 |
分子生物学用試薬の購入にあてる。
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