研究課題
グルクロン酸転移酵素は一般に解毒酵素として知られているが、カルボン酸の構造を有する薬や代謝物は、この酸転移酵素によって、生体内でアシルグルクロニド(AG)に構造変換される。AGは比較的反応性が高いことから、その毒性が示唆されているが、直接証明した報告はないために、医薬品開発において懸念材料の一つとされている。1年目には、ヒト末梢血単球細胞(PBMC)を用いて、AG標品と用いて炎症性因子の発現が誘導されることを報告した。さらにCD14陽性細胞に特異的に作用が及ぶことを見いだした。2年目はin vitroの試験系をまとめて報告した。すなわち、AG標品の半減期、ダンシルLys-Phe (dKF)のアダクト量のデータを取得し、さらに、ヒトPBMCにZPを暴露後マイクロアレイによる解析を行い、新たなバイオマーカーの候補因子を見いだし、より毒性予測性の高い系として、論文報告した。今年度は、マウスin vivoでAGに起因する毒性を証明する系を構築し、研究を完遂し論文投稿まで進めた。すなわち、ジクロフェナク(DCF)とゾメピラク(ZP)を用いて、動態関連因子を考慮した投与方法を考案し、マウスin vivoで、DCFとZPついてそれぞれヒトで報告されている肝障害と腎障害を発症させることに成功し、詳しく検討した。具体的には、DCFまたはZPを投与する2時間前にグルタチオンを低下させるBSOを投与し、また、AGから未変化体への逆反応を阻害する阻害剤を12時間前に投与することによって、肝臓中および血中のAGの濃度を特異的に増加させ、併せて肝障害と腎障害を発症させた。BSOまたは阻害薬のいずれも副作用発症には必須であった。DCFでは、AGから見変化体への逆反応の阻害は機能しておらず、ZPの場合と異なっていた。いずれの報告も、AG代謝物が肝臓および腎臓に障害性を持つことをin vivoマウスで証明した最初の例であり、いずれも論文投稿中である。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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