研究課題/領域番号 |
25293038
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中川 晋作 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (70207728)
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研究分担者 |
浅田 秀夫 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60252681)
廣部 祥子 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (70644582)
岡田 直貴 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (90312123)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マイクロニードル / 皮膚疾患 / 経皮投与製剤 / 臨床研究 |
研究実績の概要 |
アトピー性皮膚炎に対するマイクロニードル(MH)製剤の有効性・安全性について、アトピー性皮膚炎病態モデルマウスにステロイド装填MHを貼付し、病変部の病理組織学的解析を行った結果、痂皮、潰瘍などの皮膚炎症状の軽減、表皮、真皮への炎症性細胞の浸潤が抑制される傾向が認められた。さらに好酸球遊走を促進するIL-4の発現が顕著に抑制されていることを明らかにした。 老人性色素斑・脂漏性角化症に対するレチノイン酸(ATRA)装填MH製剤の臨床研究について、1.6 μgのATRAを装填したMHを病変部位に6時間貼付した。本MHの貼付を1週間隔で4回繰り返し安全性と有効性を評価した。その結果、本MHの貼付1日後において全ての被験者で軽微な紅斑が認められた。さらに4回貼付においては、最終貼付1週間後においても半数以上の方で軽微な紅斑が観察されたが、約3ヶ月後には完全に消失した。また血液生化学的検査においては異常は認められなかった。一方、有効性については、4回目のMH貼付から約3か月後において約20%の被験者で病変部位の褪色が認められ、さらに約半数の被験者において角質層の落屑が観察された。以上の結果は、本手法が脂漏性角化症や老人性色素斑の新たな治療法になり得る可能性を示唆するものである。 マイクロニードル技術の改良・強化に向けたMH製剤の特性解析において、ATRA装填MHの針強度を検討した結果、ATRAを最高25.3 μg/patch (直径1 1 cm)まで検討したが、皮膚に穿刺するのに必要な針強度を維持した状態でMHが作製できる事を明らかにした。またATRAの皮膚内へのデリバリー効率は、120分間の貼付で90%以上であり、的確にケラチノサイトにデリバリー可能であった。さらに、ATR装填MHは、4℃で保存した場合、6ヶ月以上安定であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度検討予定であった項目については、大きな問題も無く、順調に着手する事が出来た。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、皮膚疾患の病変部位への適用を考慮したMH製剤の最適化に関して、基礎研究から動物実験における有効性・安全性の評価、さらにはヒトにおける安全性・有効性を検証する臨床研究の実施まで、将来的な実用化という出口を見据えた研究計画を立案している。現在のところ、当初の研究計画通りに進んでいるが、アトピー性皮膚炎に対するMH製剤の臨床研究については、計画を見直すことにした。その理由としてアトピー性皮膚炎の場合、病変部位に瘡蓋が出来、皮膚表面が異常に硬くなっているケースが多い。現在使用しているMH製剤では、瘡蓋状態の皮膚に対しては、穿刺出来る十分な針強度を有していないため、動物実験では穿刺出来ても、実際のアトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚に対しては、的確に穿刺出来る保証が無い。そこで現在のMH製剤の針強度を再度精査した上で、瘡蓋状態の皮膚に対しても穿刺できる針強度を有したマイクロニードルを新たに作製し、そのマイクロニードルで種々検討する事が先決であると判断した。そこでアトピー性皮膚炎に対するMH製剤の臨床研究を実施する代わりにマイクロニードル技術の改良・強化に重点を置き、新たに改良したマイクロニードルについての穿刺特性に関する基礎研究並びにヒトでの安全性に関する臨床研究を行う予定である。それ以外の研究項目については、当初の計画通りに実施する予定である。
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