研究課題
基盤研究(B)
本研究では、薬物代謝酵素間のタンパク質間相互作用、特にシトクロムP450 (P450, CYP)とUDP-グルクロン酸転移酵素 (UGT)のタンパク質間相互作用による薬物代謝の制御が、in vivoでも個体差の要因として重要であることを示すと共に、その分子機構を解明することを目的とする。平成25年度は以下の成果を得た。Baculovirus-Sf9発現系を用いCYP3AとUGTの機能的相互作用について検討した。1) エピトープタグを導入したCYP3A4を用い、pull-down法でUGT2B7とのタンパク質間相互作用が起こること再検証した。2) UGT2B7と同様にtype-I型小胞体膜結合タンパク質であるカルネキシンとはCYP3A4は機能的相互作用をしなかったことから、CYP3A4-UGT2B7相互作用は特異的であることが示唆された。さらに、UGT2B7のC末端cytosolic tail欠失変異体を用いて、CYP3A4機能制御におけるUGT2B7のcytosolic tailの役割について検討した結果、CYP3A4制御に重要な役割をもつことが示唆された。3) CYP3A4がUGT1Aサブファミリーの機能に影響を及ぼすこと、その影響に分子種特異性があることが示唆された。主要な機器として購入した(株)日立ハイテクノロジーズ社製HPLCシステムは、組換え酵素機能の高感度解析に用いた。これらの成果は、国内の研究会および学会で報告した。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度の研究では、P450-UGTのタンパク質間相互作用をpull-down法を用いて解析する実験系が確立された。また、CYP3A4-UGT2B7相互作用において、UGT側の相互作用に重要な部位の候補を見出すことが出来た。CYP3A4-UGT相互作用の分子メカニズムの更なる解明に向けて、着実に成果が出ていると考えられる。また、CYP3A4がUGT1Aサブファミリーに及ぼす影響に分子種特異性があることが示唆され、CYP3A4-UGT相互作用による多様なUGT機能の制御機構が明らかになりつつあるため。
(平成26年度)UGT2B7によるCYP3A4機能の調節について、UGT2B7のどのドメインが重要であるのかについて詳細に検討を行う。また、UGT2B7の欠失変異体の発現系を構築し、P450-UGT間の双方向の機能への影響を解析し、相互作用に重要なドメイン構造、相互作用部位を同定する。HepaRG細胞を用いて、UGTをノックダウンし、CYP3A活性をcell based assayにて評価する。CYP3A活性がUGTレベルの低下に伴って変動することを明らかにする。正常ヒト肝臓を用いた代謝試験も合わせて検討する。これらの成果は、ドイツ スタットガルトにて行われるミクロゾームと薬物の酸化に関する国際シンポジウム(招待講演)にて報告するとともに、国際薬物動態学会北米地区学会-日本薬物動態学会のジョイント学会 (サンフランシスコ)、国内学会でも報告する。(平成27年度) Cyp3aノックアウトマウス (KOマウス)を用いて、UGTによって代謝される薬物のクリアランスを調べ、P450-UGT相互作用がin vivoでUGT機能に影響を及ぼす可能性を検証する。また、UGT-UGT相互作用についても検討を行う。これらの検討で得られた成績を基にして考察し、上記で確立した実験系を用いて低分子性の環境因子、制御因子を明らかにする。さらに、これらの取り組みを通して、薬物代謝酵素の機能的相互作用による個体差の要因を明らかにするとともに、得られた結果をとりまとめ成果の発表を行う。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) 図書 (1件)
Drug Metabolism and Disposition
巻: 42 ページ: 229-238
10.1124/dmd.113.054833