研究課題/領域番号 |
25293043
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐藤 真 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 教授 (10222019)
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研究分担者 |
謝 敏カク 福井大学, 医学部, 助教 (40444210)
黒田 一樹 福井大学, 医学部, 助教 (60557966)
岡 雄一郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30614432)
猪口 徳一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60509305)
尾身 実 福井大学, 医学部, その他 (00400416)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 解剖学 / 細胞・組織 / 神経科学 / 脳・神経 / ミオシン |
研究概要 |
一般に細胞の形態制御は、非筋肉型ミオシンとアクチンが担う。なかでも、ミオシンIIBは、ほとんど全ての細胞に発現し、細胞の形態制御や幾つかの機能発現に中心的役割を担う。我々はミオシンIIB(以下、ミオシンIIと表記)に結合する分子LUZP1を新たに同定した。予備実験にてLUZP1は海馬に発現しており、ミオシンIIの機能発現に必須であるそのATPase領域近傍に結合することより、ミオシンIIの活性・機能を制御する分子として働く可能性を見い出した。興味深いことに、最近のヒト脳についての網羅的研究・システムバイオロジー研究によると、この分子は大脳の領野間で大きく発現量が異なり、さらには自閉症脳において、その発現量が変化するとともに、領野間の発現差がなくなる特徴的な分子であった。それ故、自閉症病態理解に重要と想定され、その機能解析が待たれているものであった。本研究では、このLUZP1の機能を、特にミオシンIIに対する働きに注目し細胞レベルで解明し、同時に同分子の海馬を中心とする脳における役割・意義を解き明かすことを目的とする。以下の成果を得た。 実験(1)LUZP1の脳内分布を検討した。特に、LUZP1のプロモーターの下で発色遺伝子が動くマウスを作製した。このマウスにより、大脳皮質内での発現動態を明瞭に可視化できた。 実験(2)マウスより海馬神経細胞を取り出し、~3週間程度培養し、培養神経細胞同士でシナプスを形成させ、シナプス形成やスパインに対するLUZP1の働きを検討した。LUZP1のノックダウン実験や必要に応じ、異所性発現実験を行い、ミオシンII分布およびNMDA受容体のサブタイプのスパインへの局在にLUZP1が関わることを観察した。 実験(3)LUZP1ノックアウトマウスでの解析を進めた。脳特異的なLUZP1 conditionalノックアウト(cKO)マウスの作製が終了した。現在、解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LUZP1ノックアウトマウス作製できたこと、さらに別途LUZP1プロモーター下に発色遺伝子がコントロールされるマウスを作製し、生体レベルでの解析に必要な遺伝子変異マウスの解析を終了できたことがその理由である。加えて、ヒト大脳での発現動態と同様の発現を示すことを確認できた。また、LUZP1がNMDA受容体のサブタイプの局在制御に重要であることも確認できたことが理由である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、平成25年度に作製した遺伝子変異マウスを用い、LUZP1の機能解析に加え、発現動態の変化、とくに自閉症モデルマウスでの発現動態の変化とその意義を検討し、LUZP1の分子としての機能を探るとともに、自閉症病態への影響を明らかとするべく実験を行う予定である。また、LUZP1の機能の幾つかは、ミオシンを介してもたらされていると想定される。当初計画したように、ミオシン(のATPaseドメイン)に結合する分子について、その生体内での意義解明にも取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画全体としては順調に進ちょくしたが、当初は、進ちょく状況に応じ、LUZP1の大脳皮質での領野特異的発現の意義を解析する予定とし、その経費も使用予定に組み込んでいた。しかしながら、研究代表者が年度途中で所属機関を異動したため、実験を実施できない期間が生じた。特に実験室の整備に時間がかかり、また動物や遺伝子にかかわる実験の承認待ちの期間があり、(いわばプラスアルファで行う)この進ちょく状況に応じた実験を完結することはできなかった。それ故、次年度使用額が生じた。 研究室の整備も終わり、実験実施の障がいがなくなったため、平成26年度予算をあわせ、実験を速やかに遂行し、その経費として使用する。
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