研究課題/領域番号 |
25293047
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
酒井 秀紀 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (60242509)
|
研究分担者 |
澤口 朗 宮崎大学, 医学部, 教授 (30336292)
五十里 彰 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (50315850)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 生理学 / 細胞・組織 / 胃酸分泌 / 細胞防御 / イオンチャネル |
研究概要 |
胃酸分泌細胞固有の自己防御機構の解明を目的とした研究を行い、主として以下の成果を得た。 1. ブタ胃細管小胞の多様性とその機能について解析するため、まずクラスリンに着目した小胞の分別化を行った。抗クラスリン抗体とDynabeads M-280を用いた胃細管小胞の沈降実験を行い、ビーズ結合(沈降)およびビーズ非結合サンプルの胃プロトンポンプ量を比較した。胃プロトンポンプは、ビーズ非結合サンプルに主として検出されたことから、胃酸分泌に関わる小胞と塩酸防御に関わる小胞が独立して存在する可能性が示唆された。また、Cl-輸送タンパク質のClC-5とSLC26A9は異なる膜分画に検出されたことから、それぞれの発現する小胞は異なることが示唆された。ClC-5は胃プロトンポンプと機能共役してCl-輸送を行っていることを見出した。 2. ヒトSLC26A7をサブクローニングし、HEK293T細胞に発現させたところ、免疫細胞染色により、原形質膜における発現が確認された。ホールセルパッチクランプ法において、SLC26A7の発現に起因するNPPB感受性のCl-電流が観察された。重炭酸イオン存在下でBCECFを用いた細胞内pH測定を行ったところ、SLC26A7発現細胞において細胞外Cl-濃度減少に伴う有意な細胞内アルカリ化が観察された。以上のことは、SLC26A7による細胞防御機能評価系の確立を意味する。 3. SLC26A7ノックアウト(SLC26A7-KO)とワイルドタイプ(WT)マウスの胃にジブチリルcGMP(cGMPはプロスタグランジンE2刺激による細胞防御Cl-チャネル活性化のためのメッセンジャー)を前投与した後、エタノールを経口投与し、胃粘膜を摘出し組織標本を作製した。ジブチリルcGMPは、WTのエタノール傷害を有意に軽減したが、SLC26A7-KOのエタノール傷害を回復しなかった。他方、生理食塩水投与による粘膜傷害は観察されなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、胃酸分泌細胞の新規塩酸防御バリアの分子生理機構の解明ならびに胃酸分泌細胞を起点とする粘膜傷害機構の解明を目的としている。 1. 平成25年度は、胃細管小胞を発現タンパク質の差異により種別化する方法、ならびに胃酸分泌細胞の細胞防御機構に密接に関与するSLC26A7の機能発現系の構築に成功したため、今後の研究の展開が大きく見込める。 2. これまで胃細管小胞がホモな集団であるのか、ヘテロな集団であるのかについて明確にされておらず、教科書的には細管小胞はすべて同様のものとされてきている。本年度の我々の研究で、胃細管小胞はヘテロな集団であり、胃酸分泌を行う小胞と行わない小胞が存在している可能性を初めて示唆した。 3. ClC-5が胃酸分泌細胞に機能的に発現し、胃プロトンポンプと分子会合し胃酸分泌機構に密接に関与していることを論文発表した。
|
今後の研究の推進方策 |
1. 胃酸分泌細胞の細胞防御機構に関与する小胞を単離し、イオン・物質輸送機能の解析、発現する膜輸送タンパク質および糖タンパク質の解析を行う。また胃酸分泌機構に関わる小胞との膜融合調節機構の差異を明らかにする。 2. SLC26A7-KOおよびWTマウスから単離した胃腺中の胃酸分泌細胞およびヒトSLC26A7の発現系(HEK293T細胞)を用いて、SLC26A7の胃酸分泌細胞防御機能の分子生理基盤を明らかにする。さらに細胞防御Cl-チャネルの分子実体解明につなげる。 3. さまざまな条件下で処理した胃粘膜および細胞を高圧凍結技法により標本作製し、膜形態やタンパク質分布パターン等を電子顕微鏡で解析する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度末の一部の実験に使用する予定だった試薬が在庫切れで、年度内の購入が不可能となり、平成26年度初めに購入する計画に変更したためである。ただしこの計画変更は軽微であり、実験計画全体への支障はない。 平成26年度初めに行う実験の試薬購入のために使用する。
|