研究実績の概要 |
胃酸分泌細胞のイオン輸送タンパク質の局在と機能に着目し、細胞防御バリアの分子生理機構の解明等を目的とした研究を行い、以下の成果を得た。 1. SLC26A7チャネル発現細胞において、胃酸分泌細胞防御機構のメッセンジャーであるcGMPが、SLC26A7電流を増大させることを見出した。 2. ラット胃より効率的に高純度で初代培養胃酸分泌細胞を作製する方法を構築した。細胞は1週間以上培養可能であり、H,K-ATPaseと機能共役するCl-/H+交換輸送体のClC-5を強制発現させることができた。 3. ポリリジンコートしたガラス上にブタ胃細管小胞(TV)を固定し、免疫染色を行った。H,K-ATPaseのシグナルは、ほぼ全てのTVで観察された。Caveolin-1とclathrinのシグナルの一致率は3%と非常に低く、H,K-ATPaseのシグナルとの一致率は、clathrinで50%、caveolin-1で25%であった。H,K-ATPaseと各種イオン輸送タンパク質とのシグナルの一致率は、ClC-5で85%、Cl-チャネルのCFTRで50%と高い一方、K+チャネルのKCNQ1では25%と低かった。また、胃酸分泌細胞の電子顕微鏡解析において、caveolin-1で被覆されている小胞構造は少なかった。したがって、胃細管小胞には、clathrinもしくはcaveolin-1でコートされた小胞およびどちらにもコートされていない小胞が存在し、Cl-輸送とK+輸送を担う小胞が異なっていることが示唆された。 4. ラットおよびブタ胃粘膜において、H,K-ATPaseβサブユニットの糖鎖には、胃酸分泌休止状態では末端にシアル酸が付加されている一方、酸分泌刺激状態では切断されていることを見出した。シアル酸付加が、胃酸分泌機構および細胞防御機構と関連している可能性が考えられた。
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