研究課題/領域番号 |
25293048
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
松下 正之 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30273965)
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研究分担者 |
近藤 英作 愛知県がんセンター(研究所), その他部局等, その他 (30252951)
片桐 千秋 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00443664)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 神経 / 脳腫瘍 / ペプチド / イメージング / DDS / PTD / CPP |
研究概要 |
私たちは、細胞内に侵入するペプチドにタンパク質などの高分子を結合させることにより、目的の高分子を直接細胞内に導入し、生体機能を制御する方法の開発を行ってきた。ウイルスを用いる方法と違い、タンパク質を直接細胞内に導入するためDNA損傷による癌化などの副作用がなく、幹細胞制御技術や医療への応用が始まっている。しかしながら、世界中で開発されている細胞内侵入ペプチドは 全ての細胞種に侵入するため “目的の細胞にのみ選択的に侵入可能なペプチド”を長年にわたり研究し 開発に成功した。目的の臓器や細胞にのみ、化合物、タンパク質、核酸などを導入する方法は、生命現象を解明する技術としてだけでなく 新たな診断・治療法を創造することが期待される。本研究では、脳神経系の正常細胞や腫瘍への選択的な輸送用ペプチドを開発し、治療法のない神経変性疾患や脳腫瘍などに対する革新的な診断技術や治療法の開発を目指している。 先行研究でペプチドライブラリー群に対して、癌などの疾患関連細胞株を用いたスクリーニングを行い従来汎用されているTAT(いずれも非細胞選択的侵入ペプチド)などに比較して、より選択性を持った細胞内侵入ペプチドのスクリーニング方法を確立している。このスクリーニング系をグリオブラストーマ細胞などへ適応拡大した結果、グリオブラストーマ選択性を持つ候補ペプチドが得られ癌遺伝子P16ink4A 由来ペプチドと融合することにより、グリオブラストーマにはアポトーシスを起こし、正常細胞(ヒト繊維芽細胞)には全く効果を及ぼさないペプチドをデザインしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膜透過型ペプチドを診断や治療用のプローブとして用いる大きな利点は、生体内での分解・代謝が良好で、低抗原性・低毒性であり「からだにやさしい」ナノバイオツールである。この利点を生かしたペプチドによる “細胞選択的ペプチド”の開発は、人工ペプチドを応用した医療技術として既存ドラッグデリバリーシステムの抱える難問の解決に大きな前進をもたらす独創性の高いアプローチと考えられる。特に、これまでの研究で上記細胞選択的侵入ペプチドを応用したタンパク分子や機能性ペプチドの難治性の腫瘍であるグリオブラストーマ細胞への選択的送達システムの構築にまで展開されており、ペプチドプローブに診断用の蛍光標識を用いた蛍光ガイド下手術システムやPET用核種のペプチドへの結合による診断技術開発、さらに副作用の少ない多重的分子標的技術の確立が可能となり、治療法のない悪性脳腫瘍の新たな疾患治療戦略にも成り得る成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
グリオブラストーマに選択的に侵入可能なペプチドを既に発見している(既出)。平成26年度計画のコア配列や光学異性体により、より侵入効率の高いペプチドの創生を試みる。脳腫瘍モデルマウスを用いた生体イメージングに関しては、腫瘍モデルマウスへの選択的侵入ペプチドのコア配列を蛍光標識し投与することにより脳腫瘍への集積を検証する。脳腫瘍細胞への取り込みが確認されたペプチドには、治療用分子を結合し治療効果を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
血液脳関門(Blood Brain Barrier: BBB)の再構成系を用いてスクリーニングを行う予定であった。mRNA displayペプチドライブラリーの中に、血管内皮細胞やペリサイトから構成されたBBBを通過可能なペプチドが含まれていると、メンブレンフィルターを通過したペプチド-mRNA複合体は外側溶液に存在するため、外側溶液を回収後、濃縮し上記と同様の方法でライブラリーを増幅する一連の操作を繰り返すことによりBBB通過ペプチドを分離する。この手法は初めての試みであり、大量のmRNA display libraryを精製して実験系に持ち込むことができなかったために次年度に計画を繰り越した。 血液脳関門の再構成系を確立し、mRNA displayペプチドライブラリーによるBBB通過ペプチドを分離する方法を試みる。
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