研究課題
本研究の目的は、脂質メディエーターであるスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)が血管ホメオスタシス、さらには動脈硬化症、血栓症などの血管病の発症・進展を制御する機構について、S1PトランスポーターであるSpns2に着目し解明することである。我々はこれまでに、Spns2は主に内皮細胞に発現し、S1Pトランスポーターとして機能していること、さらに内皮細胞からSpns2を介して産生されたS1Pが一次リンパ組織から血管内へのリンパ球の移出に必須であることを報告した(J. Clin. Invest. 2012)。また、ゼブラフィッシュをモデル脊椎動物として用い、発生期におけるSpns2-S1Pシステムの役割を解析し、Spns2-S1Pシステムが心臓の正常な発生に寄与していることを報告した(Dev. Cell 2014)。さらに、内皮細胞からSpns2を介して産生されたS1Pがオートクリンあるいはパラクリン因子として作用し、主にリンパ管構造の維持に寄与していること、また、そのメカニズムとしてS1Pは、Rap1低分子量Gタンパク質を介して内皮特異的な細胞間接着分子Vascular endothelial(VE)カドヘリンの機能を強め、血管構造を安定化することを示した。今回、我々はRap1がVEカドヘリン接着を増強する機構について解析を行い、Rap1はRhoファミリーに属する低分子量Gタンパク質Cdc42を活性化し、逆にRhoの活性を抑えることで内皮細胞のアクチン細胞骨格の再編を引き起こし、細胞間接着部位に沿ったアクチン繊維を形成すること、また、VEカドヘリンがこのアクチン繊維にアンカーすることで、内皮細胞間接着を強めていることを明らかにした。以上の結果から、Spns2を介して内皮細胞から産生されたS1Pが、血管及びリンパ管構造の安定化・維持を制御する機構の一部を明らかにした。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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