研究課題
私達は、インスリン受容体に機能喪失変異を有するノックインマウス(mIRマウス)に高脂肪食(HFD)を負荷することにより、顕性の糖尿病を発症することを見いだした。HFD負荷により糖代謝が劇的に変化するモデルはほとんどなく、HFD負荷mIRマウス(mIR/HFDマウス)は脂肪過剰摂取による糖尿病の発症機序の解明に有用なマウスモデルと考えられた。平成26年度までの解析の結果から、mIR/HFDマウスでは脂肪組織での脂肪分解が亢進し、脂肪分解により産生されるグリセロールが、肝臓で糖新生の基質として利用され、高血糖が誘発されることを明らかにしていた。さらにグリセロールからの糖新生が亢進するメカニズムを解明する目的で、mIR/HFDマウスの肝臓の網羅的mRNA発現解析を行い、胆汁酸代謝関連遺伝子群の発現量が変化していることを見いだした。そこで、平成27年度には、胆汁酸代謝異常の病態を解明する目的で、質量分析解析によりmIR/HFDマウスの肝臓の胆汁酸を解析した。その結果、mIR/HFDマウスでは総胆汁酸量には変化がなかったものの、その組成が大きく変化していることが明らかになった。そこでmIR/HFDマウスに胆汁酸を投与し、糖代謝への影響を検討したところ、一次胆汁酸であるコール酸の投与により、mIR/HFDマウスの高血糖と肝臓での糖新生亢進は著明に改善され、胆汁酸代謝が糖尿病の新たな治療標的となることが示された。さらに、野生型マウスより採取した脂肪組織のmIR/HFDマウスへの移植によって高血糖が改善し、肝臓での糖新生も有意に改善した。本研究の結果、脂肪組織と肝臓の臓器間のネットワークの糖代謝制御における重要性が明らかになり、インスリンシグナルは両者の機能制御に必須の役割を果たしていることが明らかになった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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