研究課題/領域番号 |
25293053
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
早坂 直人 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80368290)
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研究分担者 |
徳田 功 立命館大学, 理工学部, 教授 (00261389)
竹森 洋 独立行政法人医薬基盤研究所, その他部局等, プロジェクトリーダー (90273672)
篠田 晃 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40192108)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リン酸化酵素 / 概日リズム / Sik3 ノックアウトマウス / アストロサイト / タンパク質分解 / 発光イメージング |
研究概要 |
本年度は、我々が注目したリン酸化酵素SIK3の中枢神経系における基質候補の同定とSIK3の基質リン酸化を介した機能解析の一部達成を目標としてきたが、SIK3の基質として概日リズム制御に重要な役割を果たすことが知られるPER2が有力な候補として浮上した。まず、Sik3 KOマウスから採取し、樹立した細胞株の解析から、基質候補として発現量が変化しているタンパク質の同定を試みたが、その中に、KOマウスの表現型のひとつである行動の概日リズム異常に関連すると考えられる時計タンパク質PER2が見出された。PER2はSik3 KO細胞において、発現が野生型コントロールと比較して有意に上昇しており、また、MEFを用いた実験で、Sik3過剰発現細胞では発現低下が、Sik3ノックダウン(KD)細胞では発現上昇が観察された。同様に、過剰発現細胞ではPER2のリン酸化フォームが有意に増加し、KO, KD細胞では減少した。In vitro kinase assayではSIK3の強制発現下でPER2のリン酸化が亢進した。PER2のリン酸化の影響について検討する中で、SIK3の過剰発現によりPER2の分解速度が亢進し、KO, KD細胞では減弱することも明らかとなった。以上の結果から、SIK3はPER2をリン酸化し、PER2タンパク質の分解を促進していることが示唆された。PER2の分解に関しては、これまでにCKI (casein kinase I)によるリン酸化とプロテアソーム系による分解が報告されている。そこで、SIK3によるPER2リン酸化と分解促進がCKIと協調した現象か独立の事象かを確認するために、CKI阻害剤、プロテアソーム阻害剤等を用いてSIK3の作用への影響を調べた。その結果、SIK3のPER2リン酸化と分解促進は、CKIを介した分解経路とは独立であることが示唆された。現在SIK3によるPER2分解経路の特定とCKI, SIK3によるPER2分解という複数の経路の機能分担や各々の存在意義について詳細な解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要の項で述べたように、当該年度の目標であったSIK3の基質候補の同定を達成し、更には基質候補のリン酸化を介したSIK3の機能や関連シグナル伝達経路の一部を明らかにした。また、次年度に繋がる研究成果と達成目標が新たに明確になり、当初の計画通り、SIK3の機能解明に向けての準備が整ったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の計画は順調に進展したといえるため、当初の計画に従って、2年目以降の達成目標であるSIk3下流のシグナル伝達経路の同定を進める。また、新たな基質候補の同定も並行して進める予定である。既にプロテオミクス解析により、新規SIK3の基質候補が複数同定された。この中で過去の報告などから判断して有力な候補に関しては、SIK3による被リン酸化の確認、リン酸化後の動態解析、KOマウスの表現型との関連の有無の確認などを実施し、特に概日リズム制御に関与する候補を絞り込む。もうひとつの達成目標として、既に代謝における重要な機能が報告されているSIK3が、概日リズム制御と代謝制御で共通のシグナルを介した機能を担っているのか否か、という問題を明らかにすることが挙げられる。当該年度に既に作製したSik3-floxマウスを用いて、神経特異的KOマウスや肝臓特異的KOマウスを作製し、その個体や細胞を用いて、概日リズムと代謝という2つの独立した生命現象の制御を共通の分子やシグナルが担っているのかについて明らかにする計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では発光イメージング装置(ATTOクロノス)を2台購入する予定であったが、実験の都合上、次年度に装置の購入を回すこととし、マウスの行動測定装置一式や消耗品等の購入に計画を変更したため、未使用額が生じた。 生じた未使用額については、次年度の研究費と合わせて、当該年度に購入予定であったATTOクロノスの購入と新たに導入した実験動物の維持管理費、消耗品、旅費、人件費等に充当する計画である。
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