研究課題/領域番号 |
25293057
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
吉田 知之 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (90372367)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シナプス形成 / シナプス前終末 / シナプスオーガナイザー |
研究実績の概要 |
神経細胞間情報伝達の場であるシナプスは極めて複雑な細胞間接着構造であり、シナプス形成に伴い、その前終末及び後終末にそれぞれ神経伝達物質の放出と受容に特化した細胞内構造が構築される。とりわけシナプス前終末にはアクティブゾーン、シナプス小胞クラスター、ミトコンドリアクラスターなど階層的な構造変化が整然と誘導される。これらのシナプスの構造分化を誘導する細胞接着因子であるシナプスオーガナイザーの機能欠損は自閉症、知的障害などの神経発達障害の原因となることが良く知られている。またシナプスオーガナイザーの機能欠損マウスは神経発達障害のさまざまな症状に関連した行動表現型を示すことから、疾患モデルマウスとしても注目されている。 これまでに私達の開発したシナプスオーガナイザービーズによる人工的シナプス誘導システムを用いて、ビーズ表面にシナプス前終末を誘導した際に惹起される細胞内シグナル伝達タンパク質複合体を化学的に架橋・単離し、構成因子のインタラクトーム解析により同定した。これらのシナプス前終末構築に関するシグナルタンパク質複合体の構成因子のノックダウンおよび機能亢進実験より、シナプス前終末構築の鍵分子の抽出に成功した。さらに種々のシナプスオーガナイザービーズによって誘導されるシナプス前終末構築分子群の比較から、シナプス誘導調節の共通分子群と誘導されるシナプス種ごとに異なる分子群を抽出することが出来た。これらの分子群のいくつかは自閉症、知的障害などの神経発達障害の治療に向けた創薬標的となることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シナプス前終末誘導複合体の構成因子の中から、in vitro機能スクリーニング系を用いて機能分子を単離することが出来ている。in vivoの機能解析系として当初のゼブラフィッシュスクリーン系の他にゲノム編集技術を用いたマウス脳での解析系が構築されており、今後in vivoの機能解析系で個体脳においてこれらの分子の重要性を検証するための素地が整った。
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今後の研究の推進方策 |
シナプス前終末構築における鍵分子を欠損する遺伝子改変マウス等をゲノム編集技術を用いて作出し、シナプスの形成および脳高次機能に与える影響を解析することによって、脳の構築と脳機能発現におけるシナプス前終末構築分子の重要性を検証し、更に、神経発達障害治療に向けた創薬標的となり得るかどうかを評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
スクリーニングで得られた分子群の一部の機能解析が遅れ、次年度にずれ込んだことによる。また、研究支援職員のライフイベントによる研究方針の一部変更があったため。
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次年度使用額の使用計画 |
スクリーニングで得られた分子群の機能解析と鍵分子の欠損マウスの作製実験に充当する。
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