研究実績の概要 |
我々は、AS/AGUラットがPKCgノックアウト(KO)であること、PKCgKOマウスが線条体ドパミン(DA)放出や黒質DA神経細胞変性などのパーキンソン症状を呈することを示したことから、PKCgKOマウスがパーキンソン病のモデルになることを提唱した。そこで、黒質線条体のPKCgの基質がリン酸化されなくなることがパーキンソン症状の原因であるという仮説を考え、PKCgKOと野生型(WT)のマウス線条体を用い、PKCgの基質の同定を目的として、リン酸化プロテオーム解析を行った。Ion intensityを用いた半定量的解析により、PKCリン酸化モチーフを持つ9個のタンパク質、Connexin-43, Disk1, MADD, CSPa, Calnexin, Stathmin, bPIX, NogoA, Adducin を同定した。昨年度は、これらのうちbPIXに着目して研究を行い、その結果、 bPIXについてPKCgによりSer583, Ser340がリン酸化を受け、DA遊離に関与することを示した。 本年度は、さらに検討を加え、bPIX 以外にもConnexin-43, MADD, CSPa, Calnexin, Adducinもそのリン酸化がドパミン遊離の調節に関与することを見出した。これら候補タンパク質の中で神経伝達物質遊離とシナプス機能維持に重要な働きをするシナプス小胞のシャペロンであるCSPaに着目し、詳細な検討を加えた結果、CSPaは PKCgによりin vitroで、classical PKCにより細胞レベルでリン酸化された。さらに、in vitroでのリン酸化部位はCSPaのSer10であった。PC12細胞を用いたドパミン遊離測定ではCSPaはドパミン遊離に重要であったが、Ser10リン酸化は関係なかった。一方、細胞生存については、Ser10のリン酸化が重要であった。 PKCgがCSPaのSer10をリン酸化することにより、神経細胞生存に関与することを示したことにより、CSPaは黒質線条体系におけるPKCgの基質であり、ドパミン神経細胞生存に関与する可能性が示唆された。
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