研究課題
①プロテインキナーゼCγ(PKCγ)の発現が消失しているラットやマウスでは線条体におけるドパミン遊離が減少し、パーキンソン病に類似した病態が観察されることを見出した。そこで、PKCγノックアウトマウスにおいてリン酸化が減少しているPKCの基質を網羅的に同定した。この中でβPIXをさらに詳細に検討した結果、βPIXはドパミン遊離に重要な役割をもつPKCの基質であることがわかり、その機能がPKCのリン酸化により調節されていることが明らかとなった。 (J. Neuroscience. 34 (2014) 9268-9280)②脊髄小脳変性症14型(SCA14)の原因タンパク質である変異γPKCは凝集体を形成しやすく、その性質がSCA14で見られるプルキンエ細胞死に関与していると考えられる。そこで、γPKCの凝集体形成に注目した。γPKCは野生型でもSCA14の変異体でもともに細胞内で凝集体を形成し、凝集体内部にはアミロイド様の線維が観察された。また、変異γPKCは、野生型よりもアミロイド線維を形成しやすい性質を持っていた。γPKCのC1Aドメイン、キナーゼドメインの会合が凝集体形成に重要な役割をすることがわかり、変異γPKCでは、その会合が促進され、よりアミロイド線維形成が促進されることが明らかとなった。(Hum Mol Genet. 24 (2015) 525-39.)③セロトニントランスポーター(SERT)のC末端欠損体(SERT ΔCT)の取り込み活性を指標に膜輸送を活性化させる薬物としてシグマ受容体リガンドに着目した。シグマ受容体リガンドの一部、特にアゴニストのSKF10047はSERT ΔCTの取り込み活性を上昇させたが、その効果は、シグマ受容体をノックダウンさせた細胞でも観察された。このことから、これらリガンドのSERTΔCTに対する取り込み促進効果はシグマ受容体を介さず発揮していることが予想された。これら薬物の膜輸送促進効果の機序を明らかにすることで、新たなシャペロン系が見出される可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
セロトニントランスポーター(SERT)のC末端欠損体(SERT ΔCT)を用いた新たな評価方法の開発の可能性が明らかになり、SERTを用いた検索法の開発には進展があったが、TetOnのシステムの発現効率が予想以上に悪く、従来計画した目的にたどり着いていない状況である。しかしながら、新たに各種シグマ受容体リガンドがSERTΔCTの取り込み活性を上昇させることが明らかとなった。この発見を契機に、これらの薬物の作用機序や結合タンパク質を検索することにより、新たな膜輸送を促進させるシャペロン系の解明を目指すことが可能となった。GAPDH-HTによるャペロン介在性オートファジー活性評価系では、この系は、シャペロン介在性オートファジーのみならず、ミクロオートファジー系の解析にも有用であることが明らかとなり、今後の解析に期待が持てる。
SERTΔCTの取り込み活性を上昇させる薬物の検索にさらに努める。また、現在までに明らかになったそれらの薬物の結合タンパク質を同定することにより、膜輸送を促進させる新たなシャペロン系の解明を目指す。
年度末に購入予定の試薬が、実験計画の軽微な変更により購入しなかったために、次年度使用額が生じたが、3万円程度とわずかであり、概ね計画通り研究費を使用していると判断する。
物品費に(消耗品購入)に使用する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 1件)
Psychopharmacology
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