研究課題
基盤研究(B)
ヘパラン硫酸はプロテオグリカンのコア蛋白質に共有結合した糖鎖であり、細胞表面または細胞外基質に存在し、細胞の分化、増殖、接着、移動、形態形成などを制御する。本研究は、ヘパラン硫酸糖鎖の脱硫酸化により細胞間シグナルを調整するエンド型スルファターゼSulf1とSulf2のノックアウトマウスを用いて、ヘパラン硫酸の硫酸化修飾が生体内で持つ役割を解明することを目的としている。Sulf1/2ダブルノックアウトマウスは純系遺伝子背景では生後間もなく死亡するが、混合遺伝子背景では成獣まで育つことがわかった。そこで、脳切片を作成し皮質脊髄路を免疫染色した後、三次元再構成を行うことにより、神経走行の異常の全体像を明らかにした。特に、胎児期のマウスでは解析できなかった錐体交差、脊髄への投射の異常を明らかにすることができた。また、胎児脳で見られた中脳への異常な投射が成獣でも残存していることが明らかになった。次いで、脳部位特異的なノックアウトマウスを作成するために、ドーパミD1a受容体、ドーパミンD2受容体発現細胞でCreを発現するトランスジェニックマウスを導入し、純系化を進めた。また、各々のトランスジェニックマウスで期待される遺伝子組換えが起こるかどうかをレポーターマウス(Rosa26-lacZマウス)との交配により確認した。同じく、Sulf1/2ダブルノックアウト成獣マウスを用いて腎臓での異常を解析した。その結果、軽度の蛋白尿とメサンギウム細胞の増殖があることを明らかにした。次いで、薬物投与により高血糖を誘導した場合に、遺伝子破壊の効果がどのような変化をもたらすかを病理的に調べた。また、これらの表現型と関連すると予想されるシグナル分子に関して、RT-PCR法やウェスタンブロット法を用いて、遺伝子、蛋白の発現量の変化を調べた。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画に従って実験を進めており、概ね順調に進展していると言える。
これまでに見出した表現型が出現する分子機構を明らかにするため、ノックアウトマウスにおける遺伝子発現、蛋白発現の変化を定量的に調べる。成獣脳内でスルファターゼ遺伝子を発現する細胞の種類を同定する。
マウスの繁殖を効率的に進め飼育匹数を少なくしたこと、試薬類の購入を少なく抑えることができたことにより、次年度使用額が生じた。通常の支出計画に加え、マウスの繁殖、抗体など試薬類の購入を行い、研究がより一層推進できるようにする。
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Scientific reports
巻: 3 ページ: 1402
doi: 10.1038/srep01402
Neuroscience Reseach
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医学のあゆみ
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