研究課題
本研究は、ヘパラン硫酸糖鎖の微細構造を修飾することにより細胞間シグナルを調整するエンド型スルファターゼSulf1とSulf2のノックアウトマウスを用いて、ヘパラン硫酸の脱硫酸化修飾が生体内で持つ役割を解明することを目的とした。これまでの研究で、Sulf1/2ダブルノックアウトマウスが皮質脊髄路の形成異常を持つことを明らかにしているが、生後致死となるため、成獣における解析が出来なかったが、アウトブレッド系統と交雑するとダブルノックアウトマウスが成獣まで育つことが分かったので、これらのマウスを用いて神経系と腎臓における異常とその病態発現の分子基盤を解明することを目指した。その結果、皮質脊髄路については延髄での正中交差にも異常があること、上丘への異常投射が成獣でも残存していること、他の軸索ガイダンス分子を欠損したマウスで見られる皮質脊髄路異常と性状が異なることなどが明らかになった。また、内耳有毛細胞の発生においてもSulf1/2が必要であることが分かった。一方、ダブルノックアウトマウス成獣の腎臓では、軽度の糸球体異常、軽度の蛋白尿(アルブミン尿)があることが分かった。糸球体病変は主にメサンギウム病変(メサンギウム融解、メサンギウム領域の拡大、基底膜の不整)であり、ストレプトゾトシン誘発性糖尿病マウスで病変が増悪することが分かった。これらの病変はヒトの糖尿病性腎症に類似しており、糖尿病マウスでSulf1/2の発現が増加すること、ダブルノックアウトマウスでPDGFなどのシグナル伝達が低下していることなどから、Sulf1/2は増殖因子シグナルの調節を介して糖尿病性腎症の発症に対して保護的に働く可能性が示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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