研究課題
小胞輸送は神経伝達物質の放出のみならず、ホルモンや消化酵素、血漿タンパク質の分泌、ホルモンや細胞増殖因子の取り込みなど種々の生命現象に極めて重要な役割を果たしている。すべての小胞輸送はテイルアンカー型タンパク質であるSNAREタンパク質により規定されている。これまで、私共は、SNAREタンパク質を小胞体膜に挿入する膜挿入装置CAML複合体を発見している。本年度はCAML複合体の活性制御機構について解析し、以下の結果を得た。1)CAMLに結合する膜タンパク質p47を同定した。2)p47は小胞体に局在した。3)p47はC末膜貫通領域を介してCAMLと結合していた。4)p47はCAMLとWRBに競合的に結合した。これらのことから、p47が小胞体膜上に存在すると,p47 はCAML あるいはWRBと複合体を形成し,CAML複合体の形成を阻害すると考えられた。このように本年度はSNAREタンパク質の膜挿入制御機構について成果を挙げることができた。
2: おおむね順調に進展している
CAML結合タンパク質としてp47を同定し、CAML複合体の活性制御機構を解明したことにより、おおむね順調に研究が進捗している。
本年度に同定したp47をツールに、既に開発済の膜挿入アッセイ系を用いて、小胞体膜上におけるSNAREタンパク質の量調節のメカニズムと膜挿入装置と協調して働くSNAREタンパク質の品質管理システムの分子実体を明らかにする。明らかにした分子実体をもとに、ノックアウトマウスやトランスジェニックマウスを作製、駆使することで、生体におけるSNAREタンパク質の品質管理機構の生理的意義を解明する。
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