研究課題/領域番号 |
25293074
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
神崎 展 東北大学, 医工学研究科, 准教授 (10272262)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞内小胞輸送系 / 脂肪細胞 / 骨格筋 / インスリン抵抗性 / GLUT4 / マイオカイン / アディポカイン |
研究概要 |
本年度は、外来添加した各種のVps10pリガンド類(グラニュリン前駆体およびBDNF前駆体)によるGLUT4制御に対する影響について、蛋白寿命、輸送動態、インスリン反応性の観点から総合的に検討することを目的とした。その結果、これらのVps10pリガンド類の添加は、適正なGLUT4制御をさまざまな階層において撹乱することを生化学的に確認した。よって、作業仮説であった「Vps10p受容体:液性リガンド:機能膜蛋白」からなるTripartite Complexが過渡的他分子複合体として形成され、さらに、それらの適正なバランス制御が細胞内分子輸送動態の恒常性の維持に不可欠である可能性を生化学的に示すことができたといえる。一方、これらの過渡的分子複合体は、一般的な免疫沈降法では確認することができないことから、輸送小胞のオルガネラ膜において過渡的分子複合体として形成されるものの、当初予想していた通り、低親和性状態で互いに会合するものと考えられた。 生化学的解析では原理的に限界があるため、特定の小胞オルガネラ膜上の微小領域において過渡的に形成される分子複合体を生細胞内において直接、可視化解析することを目的として、超高感度EM-CCDカメラを新たに導入したライブイメージング観察系を構築した。 さらに、Vps10p受容体(SortilinおよびSorCS1)の各種機能モチーフ(内腔リガンド結合領域、内腔プロセッシング領域、各種ソーティングモチーフ)の機能欠失型変異体発現ベクターを構築した。これらの変異体を解析ツールとして、ライブイメージング観察および生化学的研究を並行して遂行することによって、それらの分子構造とソーティング制御に関わる機能協関を究明できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、Vps10p受容体がその結合相手分子種として分泌性因子やリソソーム酵素類といったsolubleリガンドだけでなく、インスリン反応性糖輸送担体GLUT4などの機能膜蛋白質とも小胞オルガネラ膜内外で過渡的分子複合体を形成し、それらの細胞内物流動態を統合的に制御していることを各種手法(性格的手法およびライブイメージング手法)により強固に証明することを目的としている。 H25年度は当初の予定通り各種の生化学的手法を用いた解析を達成し、作業仮説となる「Vps10p受容体:液性リガンド:機能膜蛋白」からなるTripartite Complexの生理的重要性をGLUT4制御の観点から示すことができた。 また、小胞オルガネラ膜上において過渡的に弱く会合するTripartite Complexは一般的な生化学手法では検出が困難であることが予想されていたので、当初の予定通り独自のライブイメージング解析システム(超高感度EM-CCDカメラを装備した1分子可視化追跡顕微鏡)を構築した。さらに、複数の異種分子を同時に1分子レベルで可視化するための最適化も完了し、GLUT4とVps10p受容体を同時にライブイメージングできることを確認しており、今後の研究推進にすぐに活用可能な状態へとセットアップした。 さらに、Vps10p受容体の各種変異体発現ベクターの構築を達成した。これらの変異体は、生化学的解析とライブイメージング解析の両手法においても極めて有用ツールであり、今後の研究推進により多数の機能蛋白群からなる複雑な過渡的分子複合体の制御機構とその生理的役割を詳細に探索できる。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度の研究成果から、特定の輸送小胞オルガネラ膜上の微小領域において過渡的に形成される分子複合体は、予想通り一般的な生化学的手法では技術的に困難であることが判明した。そこで、H25年度に新たに超高感度EM-CCDカメラを導入して構築した独自の顕微鏡システムを駆使したライブイメージング解析を推進していく。特に、この独自顕微鏡システムでは異波長2種量子ドットをそれぞれ1分子レベルでナノメートルスケールにて追跡・解析することが可能であり、この独自ナノ計測手法を駆使することにより、生化学的手法では解析が難しい 上記Tripartite Complexを生細胞内において直接的に可視化解析していく。この際、H25年度に行ったVps10pリガンドの添加実験の成果を参考にしながら、これらの外来性リガンドによる細胞内分子物流動態に対する作用についてもライブイメージングにて解析する。 H25年度に作製した各種の特異機能欠損変異体は、生化学的解析およびライブイメージング解析によって詳細に解析していくことにより、個々の分子の各種機能領域がいかにして「細胞内分子動態の統合的な恒常性維持」に関わっているのかを探索していく。 そして、「solubleリガンドvs. Vps10p受容体」という高親和性結合調節に加えて、複数膜貫通型蛋白(GLUT4)も参画した三つどもえ”Tripartite Complex”のAssembly/Disassembly調節が細胞内ソーティングを規定し、solubleリガンド分泌量と機能蛋白局在化が統合的に制御されるという作業仮説を強固に証明していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に遂行したことに伴い発生した未使用額であり、平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。 平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。
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