研究課題/領域番号 |
25293076
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大塚 基之 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90518945)
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研究分担者 |
前田 愼 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40415956)
伊地知 秀明 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70463841)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 非コードRNA |
研究概要 |
当該年度においては、もともと想定されていた膵癌組織における反復配列RNAの異常高発現の有無について、マウス膵がん組織から抽出したRNAを用いて検討をおこなった。反復配列RNAは長さが多様なため 20mer程度の基本配列をprobeとした Northern blotting においてスメアバンドとして検出されるが、想定通り、200から8000mer程度のスメアバンドとして検出された。さらにその発現の組織内分布を確定するために、RNA in situ hybridization による検討を行ったところ、膵癌組織周囲の腺房細胞で特に高発現が認められた。すなわち癌細胞そのものだけでなく、その背景組織においてもすでに反復配列RNAは発現しており、癌組織の存在による反応として異常発現が起きるのか、あるいは発癌の前段階から発現してきているのか、という二点が想定された。 そこで、反復配列RNAの異常発現が、細胞にもたらす生物学的影響を検討するため、基本配列を2.5回繰り返す構造を持つRNAを発現するコンストラクトをk-ras変異を持ったマウスにできる膵癌の前段階であるPanINから単離した細胞に強制発現し、その表現型を観察した。その結果、反復配列RNAが存在すると細胞分裂時の染色体の分離が多極化しaneupolidityのもとになること、および 細胞にDNAダメージが生じた時にその修復が不全であり、ゲノムの異常が蓄積する可能性があることが示唆された。今後 さらに詳細な検討を続け、発癌の原因となるのかを明らかにし、予防策の開発に向けて進めていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度においてはまず臨床検体での反復配列RNAの発現状況を確認すること、それに基づいて in vitro で過剰発現した時の細胞の表現型の変化を観察することを主眼に置いていたが、そのどちらもおおむね予定どおりの進捗が見られている。できれば分子機構の解析をもう少し進めたいところではあったが、過剰発現細胞も得られその表現型を解析し、結合タンパクの同定にまで進んでいるため、ほぼ遅滞なく進行中と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、in vitro での反復配列RNAの過剰発現に伴う細胞機能異常を解析するとともに、結合タンパクの同定から得られる分子機構を詰めていきたい。 また、いっぽうで、反復配列RNAが発癌の原因となっているのか、発癌の結果として反応性に発現しているだけなのかを明らかにするために、反復配列RNAのtransgenic mouse を作製し、その表現型を解析していきたい。そのためのコンストラクトは既に準備されており、in vitro で得られた結果をin vivoで検証する予定である。
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