研究課題/領域番号 |
25293079
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
片桐 豊雅 徳島大学, 疾患プロテオゲノム研究センター, 教授 (60291895)
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研究分担者 |
水口 賢司 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 バイオインフォマティクスプロジェクト, プロジェクトリーダー (50450896)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 癌 / ゲノム / 蛋白質 / ホルモン |
研究実績の概要 |
網羅的遺伝子発現解析を通じて乳癌にて高頻度の発現亢進を認める分子として同定した新規エストロゲン受容体(ER)活性化制御分子ERAP1は、エストロゲン(E2)依存性乳癌細胞にてERの恒常的活性化を導くために、乳癌細胞に豊富に存在するER活性抑制因子PHB2の抑制機能を阻害するために必須な分子であることを我々はこれまでに明らかにしてきた。本研究では、E2依存性乳癌細胞におけるERAP1の生体機能、特にPHB2の制御機構の解明および新規ERAP1結合タンパク質の同定による新たな機能解明と新規ERAP1標的治療薬の開発を目指し、本年度は、以下の通りの成果を得た。 1.ERAP1がE2存在下においてリン酸化されることを確認したことから、分担研究者である水口博士によるバイオインフォマッティクス解析により、ERAP1リン酸化の責任キナーゼとしてPKAに着目した。 2.乳がん細胞におけるERAP1とPKAとの結合を確認し、さらに水口博士による結合領域の予測解析を通じて複数の候補配列を同定した。 3.ERAP1-PHB2結合阻害化合物として、PHB2に結合すること報告されていた天然化合物キサントフモール(XN)に着目し、XNによるERAP1-PHB2結合阻害、PHB2のE2依存性核内移行によるER転写抑制、E2および成長因子による非ゲノム的活性化シグナルの抑制および乳癌細胞増殖抑制を確認した。さらに、乳がん細胞同所性移植モデルマウスを用いたin vivo抗腫瘍効果についても、連日腹腔内投与にて完全なE2依存性増殖の抑制効果を確認した。 4.徳島大学ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針に基づいてインフォームドコンセント取得済みの乳癌臨床検体の156例の収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り、ERAP1新規結合タンパク質としてPKAを同定し、ERAP1との結合候補領域をバイオインフォマティックス解析にて予測した。さらに、ERAP1-PHB2結合阻害ペプチドよりも安定的に結合阻害を認める天然化合物キサントフモールを同定することに成功し、これによりin vitro, in vivo抗腫瘍効果を確認することに成功した。当初の計画では、ERAP1-PHB2結合阻害化合物スクリーニング系の樹立および化合物スクリーニングを開始することを考えていたことから、本年度は当初の計画以上に進展したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度同定したERAP1結合タンパク質であるPKAの結合予測配列を通じた結合の確認およびPKAによるPHB2リン酸化の意義の検討、およびERAP1-PHB2結合阻害化合物スクリーニング系による化合物スクリーニングを開始する。またインフォームドコンセント取得した乳癌臨床検体の収集の継続およびこれら臨床検体を用いたERAP1、PHB2およびERAP1結合タンパク質に対する抗体による免疫組織染色を執り行い、臨床病理学的所見との相関解析を進め、臨床的意義を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験が計画以上に順調に進んだため、申請当初計上していた消耗品を購入しなかったことから残額が生じたため
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次年度使用額の使用計画 |
申請当初、次年度に計画している実験、特に新規ERAP1結合蛋白質の結合確認、および結合阻害ペプチドの開発実験を行うために必要な消耗品の購入に充当する。
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