研究課題
基盤研究(B)
まず、(1) NDRG2/PP2A複合体によるPTEN phosphatase活性制御機構の解明について、NDRG2はPP2Aと複合体を作り、PTEN C-terminal STT (Ser380/Thr382/Thr383)の脱リン酸化を引き起こし、PTEN活性型に変化させ、PI3K/AKT情報伝達を負に制御していることを突き止めた。ATL細胞ではAKTリン酸化が恒常的に活性化されており、その活性化機構はNDRG2転写の低下に伴い、PP2AがPTENに結合できず、リン酸化状態のままPTENは不活化し、AKT情報伝達系が活性化された状態をつづけることに繋がっていた。またこのNDRG2転写低下には genome欠失の他にプロモーターメチル化が有り、ATL以外にも多種類のがんでメチルが見られ、かつ(7) NDRG2欠損マウスにおいて多種類のがんが出現したことから、NDRG2は固形癌においてもがん抑制遺伝子として働くことがわかった(Nature Comm 2014)。さらに、(2) NDRG2は、PI3K/AKT情報伝達系のみならず、NF-KB情報伝達系においても負の制御をすることが分かってきた。NDRG2は感染防御などのストレス応答因子であり、あらゆる情報伝達系に関わることが示唆され、その防御機構について検討中である。(3)さらに、NDRG2ばかりで無く、数多くの遺伝子がATL発症に伴いメチル化されており、そのメチル化機構、遺伝子を同定することを目的としてメチル化アレイによる解析を続けている。(4) またそれに加えて、PTENに対する新規キナーゼの同定とその性状を検討するため、PTEN及びNDRG2結合タンパク質を同定し、新規キナーゼの同定を進めている。一方(5) 染色体分析から同定したBCL11Bについて、さらに(6)ATLの新規マーカーとして同定したTSLC1の遺伝子発現解析を続けている。TGマウスの作製などの動物実験を含めさらなる検討を行う。
2: おおむね順調に進展している
NDRG2/PP2A複合体によるPTEN phosphatase活性制御機構の解明 が順調に推移し、ほぼ終了、論文をNature communicationsに採択され、論文発表をすることが出来き、予定通りに達成されている。。さらに、(2) NDRG2はNF-kB情報伝達系についてNDRG2は全般的な情報伝達系を負に制御しているが、NF-kB情報伝達系について、NIKのリン酸化制御に関わる事が分かった。PP2Aと結合しNIKを脱リン酸化することでNIKの活性を抑える。さらにその詳細について検討をしているところである。本年度に論文発表まで行いたい。このプロジェクトに関しても順調に達成中である。このように、NDRG2はHTLV-1感染に伴う感染防御機構、情報伝達を負に制御することで、細胞の恒常性を保つ目的で働いていることがわかりつつある。しかし、(3) HTLV-1感染はDNAメチル化異常を引き起こし、NDRG2もその標的の一つとして考えられるため、メチル化アレイ等の実験が必要であり、順次実験を進めている。こちらにかんしてはさらなる検討が必要である。(4)一方で、PTENをリン酸化するリン酸か酵素の同定も順調に来ており、リン酸化酵素をPTEN及びNDRG2との網羅的タンパク質結合解析により候補遺伝子を同定しており、現在その動物実験の準備をしている。さらに(5)BCL11B遺伝異常について、細胞株を使った実験系によりその白血病発症機構を検討しているが、細胞株の樹立に時間がかかっており、免疫不全マウスへの導入実験が送れている。さらにTGマウスの作製は行えたものの、動物舎の工事により、マウスの増産が出来ず、実験そのものはこれからである。(6) TSLC1に関して、診断系の構築は順調に推移し、さらに遺伝子発現機構について進行中である。TSLC1 TGマウスの実験がやはり動物舎の工事の関係で出来ず、進行が遅れている。
NDRG2関連(1), (2), (3)、(7)について、HTLV-1感染によるNDRG2のメチル化機構を解明すること、さらにはNDRG2が有するNDkB情報伝達系への制御機構、JAK/STAT情報伝達系への関与を検討し、PP2Aのリクルーターとして細胞内情報伝達系の恒常性の維持に関わる事を証明していきたい。動物実験系が昨年度は余り出来なかったため、本年度はNDRG2欠損マウスにおけるがんの発症と共に生活習慣病の発症が見られるため、その全容の解明と、その発症機構に関わる情報伝達系異常について詳細に調べることとする。(5) T細胞分化・ATL発症に伴うBCL11B異常発現解析染色体転座とゲノム増幅に伴うBCL11Bの異常はSplicingの異常を伴っていた。そこで異常BCL11Bの異常を確認するために、TGマウスを作製し、白血病発症機構を検討する。本年度は、さらにHBZ TGマウスとの掛け合わせを含め、動物実験の促進を図る。in vitro実験系においては、さらにsplicing異常に伴う遺伝子群の単離のため、自制代シークエンスによるRNAシークエンス、exomeシークエンスを行い、遺伝子群の単離を行う。また、BCL11B結合タンパク質を網羅的に質量分析計にて同定し機能解析と、標的遺伝子群を単離するためCHIPシークエンスを行う。これらの結果を統合して、ATL発症に及ぼす影響を検討する。(6) HTLV-1感染とATL接着因子TSLC1遺伝子の過剰発現機構TSLC1高発現機構の解析のため、プロモーターアッセイを行っている。同定した領域にTAXが結合し、かつp47遺伝子の発現低下が相まってNF-kB活性化に繋がっていることが分かってきた。さらにHBZとの関連も含め検討をしている。またTSLC1 TGマウスの検討が動物舎工事の関係で遅れているため、HBZ TGマウスとの掛け合わせを含め、検討を進める。こちらのTAXが重要な働きをしているため、p47のdegradation機構を検討し、さらなるTAX結合タンパク質の検討を、質量分析計を用いて行う。
使用残額が生じた原因は、研究棟並びに動物舎の改修により実験できる期間が限られ、大きな実験を組むことが出来なかった。中でも動物舎の改修によるマウスの実験の予定が大幅に遅れ、また特に次世代シークエンスを用いた研究を行う予定であったが、検体の収集の遅れと相まって、シークエンサーが使えないことから、次年度にその計画を繰り延べすることとした。もう一つの理由は、350万円のRealtimePCRの機器を購入する予定であったが、他研究費との合算で購入できるようになったことから、今回は全額をこの研究費で支払うこと無く支出が押さえれた。上記の理由により、動物実験、並びに次世代シークエンスを用いた研究を本年度に集中して行うこととする。動物実験は電気代の値上がり(約2倍)、マウス使用に関しての一匹の使用量が2倍となり、飼料代の値上げも有り、昨年度の約2倍の支出が見込まれ、今回の翌年度への繰越金の約半分はマウス使用代として使う予定である。従ってこちらに対して前年度に加えて150万円の支出が見込まれる。あと約半分は、前年度ほとんど出来なかった次世代シークエンスを用いた解析費用(RNAシークエンス、HIPシークエンス、Exome シークエンス)として使用する予定である。こちらも研究費残額を見ながら進める予定であるが、200万円の支出を見込んでいる。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (7件)
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