研究課題
成人T細胞白血病(ATL)はHTLV-1母子感染から長期の感染期を経て、約5%が発症する予後不良の悪性疾患である。我々はこれまで急性型ATLのゲノム解析を通じて、14q11に存在するNDRG2遺伝子がゲノム欠失、メチル化により発現低下し、細胞増殖を負に制御することからがん抑制遺伝子候補とした。NDRG2は新規PTEN結合蛋白質であり、PP2AをリクルートしPTEN-C端脱リン酸化によりPTEN phosphatase活性制御に関わっていた。ATLではPTEN高リン酸化型となりphosphatase活性が不活化されAKT情報伝達系の恒常的活性化につながっていた。NDRG2欠損マウスはTリンパ腫のみならず、肝臓がん、肺がん等を引き起こす多様ながん抑制遺伝子であった(Nature Comm 2014)。さらに、NF-kB情報伝達系においてもcanonical pathwayはAKTより、noncanonical pathwayはNF-kB inducible kinase (NIK)のリン酸化促進にNDRG2発現低下が関与しており、ATLにおけるNF-kB情報伝達系の活性化機構にNDRG2発現低下が重要な役割を有していることがわかった(Scientific reports 2015)。NDRG2発現低下にはHTLV-1感染が重要であり、長期感染はNDRG2のメチル化を促進し、HTLV-1/Taxが其のメチル化に関与していた。以上より、HTLV-1感染リンパ球内での慢性炎症に伴うNDRG2発現低下に伴う生体防御機構の破綻、ストレス応答破綻がATL発症に関わるゲノム・エピゲノム異常蓄積に重要な因子であり、その結果としてPI3K/AKT、NF-KB等複数の情報伝達系異常を引きおこし、ATL発症に繋がることを示唆する結果を得た。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 1件)
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