研究課題
私たちは、Max遺伝子のES細胞におけるホモ欠失とNucleostemin遺伝子のホモ欠失が、いずれも激しいアポトーシスを引き起こすのみならず、これら両方のホモ欠失ES細胞とも、典型的な多能性幹細胞マーカーの一つであるNanogの強制発現によってアポトーシスを回避できることを見出している。昨年度までにMaxホモ欠失ES細胞が呈するアポトーシスの原因の一部はMax遺伝子の欠失に伴って生じた遊離Mycタンパク質の作用によることを明らかにしていたが、当該年度においては、Nanogタンパク質が遊離c-Mycタンパク質に直接結合することで、Maxホモ欠失ES細胞が呈するアポトーシスを抑制していることを明らかにした。かつ、遊離Mycタンパク質がアポトーシスを惹起する理由は、DNA複製ストレスの結果であることを示唆するデータも得られた。また、本研究課題を遂行している過程で偶然、Maxホモ欠失ES細胞は本来起こす筈のない減数分裂を開始することを見出したが、その異所性の減数分裂もこのES細胞が呈するアポトーシスに関係していることが明らかになった。事実、減数分裂にとって中止的な役割を果たす遺伝子の一つであるStra8遺伝子をホモ欠失させるとアポトーシスのレベルがかなり緩和されることがわかった。なお、Nucleosteminホモ欠失ES細胞が呈するアポトーシスとMaxホモ欠失ES細胞が呈するアポトーシスではその根底にある分子メカニズムは全く異なっており、Nucleosteminホモ欠失ES細胞においてアポトーシスが起こるのは、Nucleostemin遺伝子の消失によりES細胞が未分化状態を保つことができなくなり、かつ、外、中、内の三胚葉分化もできなくなり、その為、ES細胞が発生の逆戻りに相当する胎盤系の細胞へと変換しようとするという異常な反応の結果であることが明らかになった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
2016年3月30日にMaxタンパク質が減数分裂の開始に重要であるという内容の論文をNature Communicationsに発表したが、その内容が共同通信PRワイヤーを介して紹介され、毎日新聞等、40を超えるメディアからプレスリリースされた。また、同年4月14日に日経産業新聞から同内容を新聞記事として紹介された。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
Nature Communications
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http://www.saitama-med.ac.jp/genome/press_release_03_30_16.pdf#search='%E5%9F%BC%E7%8E%89%E5%8C%BB%E7%A7%91%E5%A4%A7%E5%AD%A6+%E7%B2%BE%E5%AD%90+%E5%A5%A5%E7%94%B0%E6%99%B6%E5%BD%A6'
http://www.kyodo.co.jp/pr/2016-03-30_1539373/