研究課題/領域番号 |
25293086
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
野口 雅之 筑波大学, 医学医療系, 教授 (00198582)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | lung adenocarcinoma / Stratifin / IGBP1 / Carcinogenesis |
研究実績の概要 |
①SFNが腫瘍の形成能に影響を及ぼすかどうかを明らかにするために肺腺癌細胞株A549にshSFNを遺伝子移入し2種類のSFN発現を抑制した細胞株A549-shSFN#1とA549shSFN#2を作成し、それぞれをSCIDマウスに経気道的に移植した。コントロールのA549に比べて549-shSFN#1とA549shSFN#2では腫瘍の発生が有意に抑制された。 ②SFNがマウス肺腺腫発生に及ぼす影響を明らかにするためにSPCのプロモーターの下流にSFN遺伝子を組み込んだ発現ベクターを作成し、これを用いてトランスジェニックマウスを作成した。NNKを用いた化学発がん実験を行うとTg-SPC-SFN+/-はコントロールマウスに比べて有意に多くの腺腫を形成した。 ③IGBP1の発現抑制に関与する特異的miRを同定するためにTargetScanを用いてIGBP1に結合する可能性のあるmiRをweb上で検索し、かつmicroRNA arrayを用いて実際のIGBP1に結合するmiRを網羅的に検索した。2つの検索方法で6つのmiRが共通して同定された。これらのmiRはIGBP1を高発現している進行肺腺癌で正常肺よりもその発現が全てのmiRにおいて抑制されていた。また、6個のmiRのうちの一つであるmiR-34bの発現を8例の上皮内肺腺癌を用いて解析すると、全ての症例においてmiR-34bの発現は低下していた。 ④③で同定された6つのmiRが直接的にIGBP1の発現をコントロールしているかどうかを明らかにするためにルシフェラーゼレポーターアッセイを行うことを計画した。まず、pGL3-Promoter Vectorを用いて同定された6種のmiR結合領域と考えられる核酸配列をルシフェラーゼの上流に組み込む作業中で、現在目的の核酸配列が正確に組み込まれたことを確認中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SFNの肺腺癌発生に及ぼす影響については順調にshSFNを遺伝子移入し2種類のSFN発現を抑制した細胞株A549-shSFN#1とA549shSFN#2を作成でき、SCIDマウスを用いた経気道的移植実験が行え、十分な結果が得られた。またSPCのプロモーターの下流にSFN遺伝子を組み込んだ発現ベクターの作成に成功し、これを用いてトランスジェニックマウスの作成にも成功した。結果的にTgマウスを用いた発がん実験を行い結果が得られた。 IGBP1についても発現をコントロールする可能性のあるmiRを6つ新たに同定できた。しかしこれらの6つのmiRが実際にIGBP1の発現を直接コントロールすることを証明するためのルシフェラーゼアッセイはベクター作成に時間がかかり、未だアッセイを実施できていない。 以上、より研究の進行は概ね順調と考える。
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今後の研究の推進方策 |
①SFNのTGマウスで発生した腺腫の発現ゲノム解析をChromatin-IP sequence法にて行い、腫瘍での発現遺伝子状態を網羅的に解析する。 ②SFNの特異抗体などを用いた初期の肺腺癌診断法を確立する。 ③レポーター遺伝子アッセイ法を用いてIGFBP1の発現を抑制すると考えられるmiRが直接IGBP1と結合するかどうかを明らかにする。 ④IGBP1遺伝子と直接結合してその発現を抑制しているmiRを同定し、このmiRを用いた初期肺腺癌診断、あるいは標的治療法を開発する。
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