研究課題
肺腺癌の発がんとその初期悪性化の分子基盤を解析するためにSFNおよびIGBP1に着目して研究を行った。我々はA/Jマウスを用いた肺腺癌の化学発癌実験で腫瘍発生前の肺組織でコントロール肺に比べて発現が亢進する遺伝子としてLactoferrinを同定した。このlactoferrinに特異的に結合するタンパクとして同定されたのがIGBP1である。我々が明らかにしたIGBP1の発現をコントロールするmiR群がIGBP1のプロモーター領域に結合してその発現を抑制しているのかを証明するためにルシフェラーゼ解析を行うこととしたが研究期間中に解析に用いる発現ベクターを構築することが間に合わなかった。SFN(stratifin, 14-3-3σ)は上皮内腺癌と初期浸潤癌の間での発現遺伝子の網羅的解析(mRNA array analysis)で初期浸潤癌に有意に発現が亢進しているの遺伝子の一つとして同定した遺伝子である。SFNの発現はそのプロモーター領域のメチル化によって制御されており、正常肺ではSFNプロモーター領域のCpGサイトはほぼ完全にメチル化されているのに対し、腺癌細胞では少なくとも部分的には脱メチル化されている。そこでSFNが肺腺癌発生の初期に関わるドライバー遺伝子(癌遺伝子)である可能性が高いと考え、肺末梢上皮細胞に特異的なプロモーターであるSPC遺伝子のプロモーターの下流にSFN遺伝子を組み込んだベクターを作製し、これを用いてICRマウスでTGマウスを作製した。このTGマウスを用いてNNKを投与した化学発がん実験を行うとコントロールマウスでは3/27(11.1%)しか腫瘍形成が見られないのに対し、TGマウスでは10/23(47.8%)に腫瘍形成が認められた。以上より、SFNは肺腺癌の初期に発現が亢進し、肺腺癌の発生、初期の悪性化に関わることが明らかになった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 図書 (1件)
Virchows Archiv
巻: 468(2) ページ: 179-190
10.1007/s00428-015-1863-z.
Molecular Cancer.
巻: 14(1) ページ: 142-142
10.1186/s12943-015-0414-1.
Carcinogenesis.
巻: 36(6) ページ: 616-621
10.1093/carcin/bgv026.
Cytopathology
巻: 6(6) ページ: 354-361
10.1111/cyt.12220