研究課題
1)新たな転座関連軟部腫瘍の探索:当教室室に登録された診断未確定の159例抽出し、CIC遺伝子転座を有するもの6例、うちCIC-DUX4融合遺伝子を有するもの4例とBCO-CCNB3融合遺伝子を有するもの5例を抽出した。これらの腫瘍の詳細な臨床病理学的特徴を明らかにした。過去に診断された孤立性線維性腫瘍、血管周皮腫もしくはこれらの疑い症例250例をレビューし、軟部血管線維腫に相当する組織像を呈する症例を13例抽出した。この13例についてAHRR-NCOA2融合遺伝子解析を行い新たな臨床病理学的特徴を見出した。2)未分化多型肉腫におけるAkt-mTOR経路およびHSP90タンパク発現の検討: 臨床検体ではHSP90とAkt/ mTOR経路の発現に相関を認め、HSP90の発現とAkt/ mTOR経路の活性化は予後不良因子であった。次に、細胞株を用いた解析でHSP90阻害薬の抗腫瘍効果を検証したところ、HSP90阻害薬は細胞増殖と浸潤能の抑制効果を示し、細胞のAkt/ mTOR経路を不活性化した。以上から、HSP90は未分化多形性肉腫における新たな治療標的となる可能性が示唆された。3)軟部肉腫における転写因子FOXM1の発現とその分子標的としての可能性:平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、血管肉腫そして滑膜肉腫において検討した。免疫組織学的検討では平滑筋肉腫、滑膜肉腫においては単変量、多変量解析においてFOXM1の発現は予後不良因子となっていた。他の肉腫においてもFOXM1の発現と臨床病理学的事項との相関を認めた。細胞株におけるその阻害の効果を検討したところ阻害薬やsiRNAを用いたFOXM1の阻害により、それぞれの細胞株で腫瘍増殖、化学療法抵抗性そして浸潤能などの低下を認めた。滑膜肉腫においてはcDNAマイクロアレイによるクラスタリング分析にてFOXM1の発現は細胞周期関連の遺伝子発現との相関が確認され、悪性化への関与が疑われた。以上からFOXM1は様々な軟部肉腫での治療ターゲットとなる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
1)新たな転座関連軟部腫瘍の探索では、当教室に収集された膨大な軟部腫瘍の症例から新たに提唱された疾患概念で、特異的融合遺伝子CIC-DUX4, BCOR-CCNB3陽性肉腫およびAHRR-NCOR2融合遺伝子陽性の軟部血管線維腫を同定、抽出し、既知の報告されているものに加えて新たな臨床病理学的特徴を明らかにすることができた。稀有な小円形細胞肉腫と線維性腫瘍の詳細な病態を明らかにすることができた。2)未分化多型肉腫におけるAkt-mTOR経路およびHSP90タンパク発現の検討によりHSP90の発現とAkt/ mTOR経路の活性化は相関し、両者とも予後不良因子であった。細胞株ではHSP90阻害薬は細胞増殖と浸潤能の抑制効果を示し、細胞のAkt/ mTOR経路を不活性化した。以上から、我々が今まで明らかにしてきた様々な軟部肉腫におけるmTOR阻害剤に加えてHSP90が未分化多形性肉腫における新たな治療標的となる可能性を示すことができた。3)軟部肉腫における転写因子FOXM1の発現とその分子標的としての可能性を平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、血管肉腫そして滑膜肉腫でそれぞれ検討し。免疫組織学的検討では平滑筋肉腫、滑膜肉腫においては単変量、多変量解析においてFOXM1の発現は予後不良因子となっていた。また他の肉腫においてもFOXM1の発現と悪性度の指標との相関を認めた。細胞株における阻害薬やsiRNAを用いたFOXM1の阻害により、それぞれの細胞株で腫瘍増殖、化学療法抵抗性そして浸潤能などの低下を認め、滑膜肉腫においてはcDNAマイクロアレイ解析により悪性化への関与が疑われた。これらの結果からFOXM1は軟部肉腫での新たな治療ターゲットとなる可能性を明らかにした。
1)滑膜肉腫をはじめとした悪性軟部腫瘍における治療標的としての癌精巣抗原の探索:滑膜肉腫で高発現している癌精巣抗原をcDNA マイクロアレイを用い同定し、滑膜肉腫108例を用い免疫染色とreal-time PCRを行い、その発現レベルおよび臨床病理学的因子と予後との関係を検討し、免疫療法の標的としての有用性を検討する。さらに免疫療法の対象として期待される癌精巣抗原MAGEA4の悪性軟部腫瘍における発現を免疫染色にて大規模な検体数で網羅的に行い、各腫瘍における免疫療法の標的、また鑑別診断のマーカーとしての可能性を検索する。また子宮と軟部平滑筋肉腫における癌精巣抗原MAGEA1、MAGEA3、MAGEA4、NY-ESO-1、GAGE7の蛋白発現を免疫染色により評価し、両腫瘍における発現プロファイルを比較し免疫療法の対象としての可能性を探る。2)横紋筋肉腫における癌精巣抗原MPOSPH1の発現・機能解析:横紋筋肉腫の約100症例のパラフィン包埋ブロック、25例の凍結標本および4株の細胞株を用いて免疫染色、western blotting、RT-PCRを行いMPHOSPH1および関連分子であるpSTAT3、SOCS3のmRNAと蛋白の発現を評価する。さらにsiRNAして増殖能、遊走能、浸潤能の変化を観察し、MPHOSPH1ノックダウン細胞株における蛋白発現の評価を行い、治療応用できるかを検討する。3)悪性末梢神経鞘腫瘍における網羅的遺伝子変異解析による新たな治療標的の探索:200余例のMPNST症例を用いて遺伝子変異および治療標的の検討を行う。凍結標本のある症例に関して次世代シークエンスにより遺伝子変異を同定し、パラフィン標本でhot spotのPCR-direct sequencingを行うことで遺伝子変異の頻度を確認する。その遺伝子変異作用機序および臨床病理学的因子と予後との関係を検討し、治療標的としての可能性を探る。また、多数例のMPNSTに対して網羅的に免疫組織化学評価を行い、免疫療法の標的や鑑別診断のマーカーとなりうる抗原を検索する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件) 図書 (2件)
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