研究課題
接触抗原により誘導されるアレルギー性皮膚炎の病態にはCD4+ T細胞が関与していることが知られているが、病態形成の分子メカニズムの詳細はいまだ不明な点が多い。CD155 (poliovirus receptor; PVR/Necl-5/Tage4)は、1989年にヒトのポリオウイルスレセプターとして初めて同定された分子量80~90 kDaの一回膜貫通型糖タンパクである。CD155は霊長類においてのみ同定されていたが、私達は、マウスのTage4/Taa-1がCD155のマウスホモログであることを同定した。また、私達は、CD155がNK細胞やCD8+ T細胞に発現する免疫活性化受容体DNAM-1のリガンドであることを同定した。CD155は特にCD4+ T細胞に高発現しており、活性化に伴いCD155の発現が上昇することから、CD4+ T細胞上のCD155がシグナル伝達分子である可能性を考え、解析した結果、CD155がCD4+T細胞のco-stimulatory分子として機能していることが明らかになった。さらに、私たちはCD155を介するシグナルが、CD4+ナイーブT細胞からTh1細胞への分化を誘導することを見出した。接触性皮膚炎に代表されるアレルギー性皮膚炎病態ではCD4+ T細胞が重要な役割を担っていることから、CD4+T細胞上のCD155がアレルギー性皮膚炎の病態に関与している可能性が考えられた。
2: おおむね順調に進展している
CD4+T細胞上のCD155がco-stimulatory分子として機能していることを明らかにした。また、CD155を介するシグナルが、CD4+ナイーブT細胞からTh1細胞への分化を誘導することを見出し、アレルギー性皮膚炎の病態に関与している可能性を示唆するデータを得た。
接触抗原により誘導されるアレルギー性皮膚炎は、アレルギー性接触皮膚炎から増悪化アトピー様アレルギー性皮膚炎まで多彩な症状を示し、患者のQOLを著しく低下させている。その病態にはヘルパーT細胞が関与していることが知られているが、病態形成の分子メカニズムの詳細はいまだ不明な点が多い。アレルギー性皮膚炎病態の分子メカニズムを明らかにし、根本的な治療法を開発することは、社会的にも意義のあることと考え、今後は、これまでに得られた成果を基礎として、アレルギー性皮膚炎病態の制御に向けて研究をすすめていく方針である。具体的には、CD155遺伝子欠損マウスにアレルギー性皮膚炎を誘導し、その病態を観察することで、CD155のアレルギー病態における役割を解析する。また、CD155と生体内Th1型免疫応答の関係を解析する。さらに、アレルギー性皮膚炎を誘導したマウスにCD155を分子標的とした治療が有効であるかについても検討する。
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