研究課題/領域番号 |
25293093
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
笹原 正清 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (20154015)
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研究分担者 |
石井 陽子 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (00361949)
山本 誠士 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (10456361)
濱島 丈 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (80467092)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 増殖因子 / 受容体 / 稀突起膠細胞 / 間葉系幹細胞 / 血管周囲細胞 / 脱髄 / 再生 / 虚血 |
研究実績の概要 |
傷害された神経組織の再生や修復の誘導は医学上の喫緊の研究課題である。本研究は、脳に発現する血小板由来増殖因子(PDGF)が、脳組織の再生や修復を誘導する機序を解明する。同受容体(PDGFR)の条件的ノックアウト(KO)マウスを用い、①PDGFR-βが側脳室脳室下帯(SVZ)由来の新生神経細胞の脳梗塞病変への動員、また、②PDGFR-αが、稀突起膠細胞の前駆細胞(OPC)がSVZより分化・増殖し、髄鞘形成細胞に成熟し、脱髄病変を修復する過程ではたす役割を、それぞれ明らかにすることを計画した。 ①では、一昨年、脳で元来PDGFR-βを豊富に発現する血管周囲細胞とSVZの神経幹細胞のの内、神経幹細胞で選択的にPDGFR-βを不活性化すると同細胞の梗塞巣への遊走が高度に促進することを示した。昨年は、mRNAのマイクロアレイ解析により、当該モデルにおける神経幹細胞の遊走が、病変での特定の遊走促進因子の過剰発現によることを見出した。さらに当該モデルマウスから分離、培養した神経幹細胞には特定の接着因子の発現誘導があり、これが細胞の遊走を促進することも明らかにした。これらの機序を介して、PDGFR-βは、虚血巣への神経幹細胞の遊走に関与していることを提示することができた。再生医療に基礎的な知見を与えるものであり、現在論文投稿の準備中である。 ②の実験では、成熟マウス個体にTamoxifenを投与して、PDGFR-αの遺伝子を不活性化すると、同遺伝子を元来豊富に発現しているOPCが髄鞘形成細胞へと急激な分化を遂げる、これと同時に遺伝子の不活性化を免れた脳に広く分布すると考えられる未分化な幹細胞成分からPDGFR-α依存性に新たなOPCが分化誘導されてくるという全く新しい事実を見出しつつあり、その詳細を検証中である。これまで全く知られていない神経組織の再生機序である可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
全体の4年計画の2年を経た段階で、二種類のPDGFR受容体がそれぞれ、独立して脳の再生現象に深く関与する証拠を得ることができた。さらにPDGFR-βの条件的KOが誘導する神経幹細胞の病変への遊走はこれまでに報告がないほど強いものである。また、PDGFR-αの研究では、PDGFR-αに依存する未知の幹細胞が稀突起膠細胞の再生を非常に強力に誘導するというこれまでに全く知られていない新しい事実である。脳の再生機序を新たに見出すことが出来ており、順調に研究が進捗していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
PDGFR-βの研究では、論文の投稿を完成する。続いて、これまで、遊走促進因子と接着因子を中心に実施したmRNAのマイクロアレイの解析を、より対象を広げて解析することにより病変への神経幹細胞の遊走を誘導する候補物質を探索する。
PDGFR-αの研究では、OPCの再生の源ととなるはずの幹細胞を組織化学および培養により探索する。これによって新しい再生のバイオソースの候補となる細胞を同定していく。OPCの再生課程で活性化されるシグナルをFlowcytometry等の手法により検証し、今後の髄鞘修復を促す治療のための候補遺伝子を見出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入時に端数が出た為。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度と合算して使用予定。
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