研究課題/領域番号 |
25293094
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
内木 宏延 福井大学, 医学部, 教授 (10227704)
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研究分担者 |
長谷川 一浩 福井大学, 医学部, 助教 (60324159)
大越 忠和 福井大学, 医学部, 助教 (90362037)
小澤 大作 福井大学, テニュアトラック推進本部, 助教 (60554524)
樋口 京一 信州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20173156)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 蛋白質 / 病理学 / 透析アミロイド-シス / β2-ミクログロブリン / アミロイド線維 |
研究概要 |
本研究は、アミロイドーシスを代表するヒト疾患モデルとしてβ2-ミクログロブリン (β2-m) アミロイドーシスを選び、発症の分子機構を試験管内実験系、遺伝子改変マウス、培養細胞系、臨床病理学的解析を組み合わせ解明することを目標としている。 ①新規細胞外シャペロンの探索とβ2-mアミロイド線維形成抑制機構解析:既知細胞外シャペロン同様、急性期蛋白質であるC反応性蛋白質と血清アミロイドP成分はアミロイド線維形成を抑制することが分かった。②変異型β2-m(D76N)アミロイド線維形成を促進・抑制する細胞外マトリクス分子や細胞外シャペロンの探索:組み換えβ2-m(D76N)のアミロイド線維形成を抑制する細胞外シャペロンを明らかにした。③ヒト変異型β2-m (D76N) トランスジェニック(TG)マウスの作成と繁殖:野生型に比べ不安定で凝集しやすい変異型β2-m (Asp76Asn) が消化管と末梢神経に好んで沈着し、家族性アミロイドーシスを引き起こす事が報告されている。この遺伝子を組み込んだトランスジェニックマウスの作成が順調に進行している。④β2-mアミロイド線維の細胞毒性評価:線維が骨・関節破壊を引き起こす機構を解明する為、試験管内で形成したβ2-mアミロイド線維をウサギ滑膜線維芽細胞に添加した。その結果、生存率が低下し、光学顕微鏡、及び電子顕微鏡観察では、アミロイド線維が細胞内に取り込まれており、細胞質や核に、壊死ならびにアポトーシスの両方の形態変化が認められた。TUNEL染色による検討でも、アポトーシスが亢進していることが示された。⑤ β2-mアミロイド線維形成を促進する生体分子群の探索:β2-mアミロイド線維形成において、β2-mの立体構造を部分的に不安定化させる因子が必要であり、生体因子の候補群が生体中でβ2-mに相互作用していることを検出する方法を調査検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①新規細胞外シャペロンの探索とβ2-mアミロイド線維形成抑制機構解析:C反応性蛋白質と血清アミロイドP成分は、アミロイド前駆蛋白質が異なる数種のアミロイド線維の形成を抑制することが示された。この結果から、新規細胞外シャペロンの候補蛋白質であると考えられる。 ②変異型β2-m(D76N)アミロイド線維形成を促進・抑制する細胞外マトリクス分子や細胞外シャペロンの探索:β2-m(D76N)アミロイド線維形成を抑制する細胞外シャペロンを明らかにし、さらにβ2-m(D76N)モノマーと細胞外シャペロンの相互作用を、架橋試薬とウエスタンブロット法を用いて検出した。 ③ヒト変異型β2-m (D76N) TGマウスの作成と繁殖:ヒト変異型β2-m遺伝子のトランスジーンに成功した。現在当該マウスのバッククロスを行い、遺伝的に安定しているマウスを作製している段階である。 ④β2-mアミロイド線維の細胞毒性評価:光学顕微鏡及び電子顕微鏡観察、TUNEL染色法などを組み合わせて解析した。その結果、β2-mアミロイド線維はエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれ、エンドソーム膜、リソソーム膜の破壊などを介して壊死及びアポトーシスの両者を引き起こすことで、ウサギ滑膜線維芽細胞に対して直接毒性を発揮する機構を導き出すことができた。 ⑤ β2-mアミロイド線維形成を促進する生体分子群の探索:不安定化因子により立体構造が変化するβ2-mの部位が、核磁気共鳴法等によっても特定できておらず検出方法を絞り込むことが難しい為、対策を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
①新規細胞外シャペロンの探索とβ2-mアミロイド線維形成抑制機構解析:既知細胞外シャペロンと今回明らかにしたC反応性蛋白質と血清アミロイドP成分の比較検討から、これらのシャペロン能の蛋白質科学的特徴を、ANS蛍光測定法やウエスタンブロット法を用いて解析する。 ②変異型β2-m(D76N)アミロイド線維形成を促進・抑制する細胞外マトリクス分子や細胞外シャペロンの探索:これまでに確立したβ2-m(D76N)アミロイド線維形成条件を基に、さらに関係性が示唆される細胞外マトリクス分子を添加し、線維形成への影響をチオフラビンT蛍光測定法を用いて明らかにする。 ③ヒト変異型β2-m (D76N) TGマウスの作成と繁殖:TGマウスの系統を樹立した後、月齢毎のアミロイド症の発症の有無や線維沈着の臓器分布、特にヒトで報告されている消化管と末梢神経への沈着を病理組織学的に検討する。 ④β2-mアミロイド線維の細胞毒性評価:壊死やアポトーシスを誘導する機構が、エンドサイトーシスに依存していることを見出したので、エンドサイトーシス阻害剤を用いた解析や、細胞損傷過程で生じるプロテアーゼや炎症性サイトカインの発現・分泌を、RT-PCR法等を用いて解析することなどで、詳細に検討していく予定である。 ⑤ β2-mアミロイド線維形成を促進する生体分子群の探索:アミロイド線維形成の際に構造変化する領域を特定せずに、その構造変化を検出しうる一連の立体構造認識特異抗体等を、全領域にわたって安価に作成する方法を検討する。この方法により生体中のβ2-mのアミロイド原性変化を検出する方法を構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度において、本研究の目的の遂行にあたって、超低温フリーザ Panasonic MDF-U500VX-PJを購入した。また、試薬器具等の消耗品の大幅な使用減少を見込めない状況であった。このため、交付申請書に記載した蛍光分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ・F-7000型)の購入を一旦保留し、既存の分光蛍光光度計を用いて研究を進行した。このため、結果的に分光蛍光光度計と超低温フリーザの差額に相当する程度の使用残高が生じた。 ①新規細胞外シャペロンの探索とβ2-mアミロイド線維形成抑制機構解析:市販のC反応性蛋白質と血清アミロイドP成分の購入および消耗品に使用する。②変異型β2-m(D76N)アミロイド線維形成を促進・抑制する細胞外マトリクス分子や細胞外シャペロンの探索:市販の細胞外マトリクス分子と細胞外シャペロンの購入に使用する。③ヒト変異型β2-m (D76N) TGマウスの作成と繁殖:マウスの飼育費用や、組織病理サンプル作成のための薬品や器具等に使用する。④β2-mアミロイド線維の細胞毒性評価:細胞培養に用いる各種消耗品、薬品や、プロテアーゼや炎症性サイトカインの発現・分泌を解析するためのRT-PCR法や特異的定量キット等に使用する。⑤ β2-mアミロイド線維形成を促進する生体分子群の探索:β2-m立体構造認識抗体作成等に使用する。
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