研究課題/領域番号 |
25293095
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
松川 昭博 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90264283)
|
研究分担者 |
伊藤 利洋 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (00595712)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 炎症・自然免疫 / シグナル伝達 / ウイルス感染 |
研究概要 |
本年度は、炎症モデル動物でのERK経路により免疫制御機構を、その内因性抑制因子Spred-2の役割を中心に解析してきた。敗血症モデルでの解析の結果、Spred-2は自然免疫に負の影響を及ぼすことが判明した。感染性肺血症モデルにおける生存率は、Spred2欠損マウスは野生型に比して有意に高かった。Spred2 欠損マクロファージの貪食能は野生型と比較して有意に亢進しており、マクロファージ上の補体レセプターの発現は亢進していた。ConA誘導劇症肝炎モデルでの肝傷害はSpred-2欠損マウスで増悪し、血中IFNgレベルの上昇と肝臓中のT細胞、NKT細胞数の増加を認めた。これらのサイトカイン産生は、クッパー細胞依存性であることを明らかにした。一方、Spred-2欠損マウスにH1N1を感染させると、肺炎は増悪しマウス死亡率は有意に上昇した。このとき、肺内ウイルス量やIFN、IL-6産生量も上昇した。Spred-2欠損マウスにU0126(MAPK阻害剤)を投与すると、H1N1感染後のERK活性化は減少し、サイトカイン産生とウイルス量の減少がみられ、マウス死亡率は改善した。OVA喘息モデルでは、Spred-2KOマウスの気道抵抗性は減少し、病態に関わるサイトカインレベルが減少していることを見いだした。 以上の結果は、シグナル伝達抑制による免疫機構の解明は、難治性炎症疾患、炎症免疫疾患、炎症発がんの新たな治療戦略に繋がる可能性がある。現在、組織特異的Spred-2欠損マウスの作成を進めるとともに、過剰発現マウスも作成しており、さらに詳細なメカニズムを解析する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画した炎症モデル(4つ)の解析は順調に進捗しており、これまでその成果を学会発表してきた。現在,うち3つについては最終段階に入っており、論文投稿に向け進行中である。より詳細な解析のためのSpred-2-floxマウス作成も完了し、現在、交配を進めてマウスの確保の段階に入っている。研究の展開から、当初計画に入れていなかったSpred-2過剰発現マウスの作成にも着手し、現在、F1作成の段階に来ている。また、次年度に繋がる、ヒトがん組織での検討も進めており、in vitroの実験にむけ、Spred-2強発現のStableな癌細胞株作成も行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究成果をもとに、さらに詳細な病態解析を行い、論文発表へと繋げる。病態解析を行う一方、Spred-2をターゲットにした治療戦略にむけ、当該遺伝子をadenovirusに組み込み、in vivoで長期発現できる系を作成したいと考えている。また、本年度研究計画のメインテーマの1つである、ヒトがん組織でのSpred-2発現とがん進展度、分化度、浸潤様式の関係について比較検討する。一方、炎症発がんモデルに着目し、炎症とがんの関係をERK/Spred-2の方面から明らかにする。
|