研究実績の概要 |
本研究の目的は、細胞外マトリックスの主要なプロテオグリカンとして知られるバーシカン(Versican, 以下Vcan)の各種病態における役割を、種々の同遺伝子改変マウスの病態モデルを用いて明らかにすることである。 B6系マウスに生着し、かつVcanを発現しない腫瘍細胞株QRsP11をCre酵素発現アデノウイルス(Ad-Cre)と共に皮下に局所注入して宿主Vcan発現の腫瘍細胞に対する影響を検討した結果を昨年度に報告した(Fanhchaksai K, et al., Int J Cancer, 2016)。当該の報告では、宿主間質細胞のVcan発現が腫瘍細胞増殖を抑制すること、同抑制作用にヒアルロン酸とCD44を介したシグナル伝達ならびにTGFβシグナル伝達が関与すること、宿主線維芽細胞とコラーゲン線維の維持に間質Vcanがきよす必要なこと、これらのVcan機能はG1-G3ドメインによることを明らかにした。 本年度は当該機能を発揮するVcanを合成分泌する細胞を明らかにするため、マクロファージ系細胞のVcan発現が欠失するLyz2-Vcanマウス、筋線維芽細胞/腫瘍随伴線維芽細胞にのVcan発現が欠失するActa2-Vcanマウス、線維芽細胞特異的タンパク質として当初報告されたS100a4細胞にてVcan発現が欠失するS100a4-Vcan細胞にQRsP11、細胞を移植したところ、Lyz2-Vcanマウスのみで腫瘍塊の増生が観察された。腫瘍塊内と周囲の結合組織に浸潤するマクロファージの数と性状を現在解析中である。 また、本年度は従来続けていたVcanのAサブドメインを欠失した遺伝子改変マウスの皮膚解析を行い、同分子が真皮形成に必要であることを報告した(Hatano S, et al., Connect Tissue Res, in press)。
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